特集【2】3Dプリンターが建設を変える! 清水建設ラクツム(LACTUM)【建設DX】

建設DX特集第2回目は、建設3Dプリンターの導入事例を紹介します。

最初に3Dプリンターを考案したのは日本人!

現在では大学をはじめとした教育の現場で、日常的に目にする3Dプリンターですが、全世界で一気に普及しだしたのは2013年とまだ最近のこと。

そして最初に3Dプリンターの原型となる装置が考案されたのは1980年。名古屋で技術士として働いていた小玉秀男氏によって、3Dプリンターの元となる光造形の付加製造が開発されたのが始まりとされます。

そして1987年に同様の研究をしていた米国のチャック・ハル氏が特許出願を行い、この時「3Dプリンター」の名称が生まれました。その後は、チャック・ハル氏が創業した3D Systems社や、新たなFDMの積層方式3Dプリンター特許を取得した米国のメーカー、Stratasys社により3Dプリンターは大きく成長していき、世界的に3Dプリンターの実用化が始まっていきます。

両社の特許が切れた2009年以降は全国で多くの企業が一斉参入し、当初は億単位の高額な産業用装置だった3Dプリンターは、製造業や建設業が独自開発をする流れができました。その中で「建設3Dプリンター」が生まれ、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)推進上、次第に活用事例が増えています。

2013年以降は、個人でも購入が容易な小型且つ安価な3Dプリンターが続々と商品化されて、いまでは教室や研究室で実習に使われることが多くなっています。

清水建設が建設3Dプリンター用に独自開発した「ラクツム(LACTUM)」

2023年6月、清水建設は自社開発したコンクリート「構造用ラクツム(LACTUM)」を建築物の構造部材として発表しました。構造用ラクツムは国内で唯一、指定建築材料として国土交通大臣認定を受けた建設3Dプリンター用コンクリートです。

建築材料として国土交通大臣認定を受けているので、通常の建築確認手続きで建築物を建てられるのがメリットとなり、建設3Dプリンターの適用範囲が広がることで、プロジェクトの期間を短縮することに役立ちます。

清水建設は2020年に高強度・高靭性の繊維補強モルタル「ラクツム(LACTUM)」を独自開発しており、3Dプリンターで積層造形した型枠を実用化していました。ラクツムは一般的なコンクリートと同等の強度と耐久性を持っていますが、モルタルであるため、構造部材として使用することは難しいものでした。

「構造用ラクツム(LACTUM)」は構造耐力上主要な部分に使用できるように、粗骨材を混入してコンクリートとしており、2022年3月に指定建築材料の大臣認定を取得しています。

清水建設によれば「構造用ラクツム(LACTUM)」と建設3Dプリンターにより、一般的な鉄筋コンクリートに比べて、個別認定の取得にかかる労力や時間を省略することが可能で、「手続き期間を3~5カ月短縮できる」とのことです。

今回、清水建設は東京都江東区で建設中の自社施設「潮見イノベーションセンター(仮称)」内にある、駐車場の屋根構造物に構造用ラクツムを採用しました。膜屋根の外周部の一部を、構造用ラクツムの積層と鉄筋の敷設を繰り返すことで造形しており、斜め柱の型枠にも用いています。清水建設では今後、建設3Dプリンターの適用案件拡大と、施工効率向上に注力するとしています。

出典:清水建設プレスリリース

建設業界では慢性的な人手不足が懸念されており、特に施工における省力化・省人化が課題となっていますが、建築用部材の進化と3Dプリンティング技術の展開により、課題解決につながるものと大いに期待されています。

(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました。)