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国家公務員一般職(技術系)で採用予定数割れ。民間との競争激化で給与見直しや働き方改革へ【建設NEWS】
2024年8月13日、人事院は国家公務員一般職(大卒程度)試験の合格者を発表しました。本年度の技術系、申込者数は3,520人と過去最少となり、9つの試験区分のうち「デジタル・電気・電子」「機械」「土木」「建築」「化学」の5区分で合格者数は採用予定人数に届きませんでした。
このことは全国紙で一斉に報道されましたので、記事を目にした人が多かったのではないかと思います。総合資格naviでは、この中で「土木」「建築」について、結果と原因分析、人事院の施策についてまとめてみたいと思います。
公務員技術系(土木・建築)は深刻な人手不足
技術系の人手不足は国家公務員だけではなく、地方公務員でも深刻な状況にあり、総務省の調査によると、23年4月時点でおよそ25%の市町村は土木系職員が1人もいないということです。
団塊世代の退職が続き、補う若手人材の採用に苦労している点は建設業界共通ですが、国家公務員一般職の土木・建築区分の合格者は、主に国土交通省に採用されて、専門性を活かして、総合職職員と共にインフラの整備や維持管理、防災など幅広い役割を担う人材ですので、確保をしていく必要があります。
2024年度は採用試験受験申込者数の減少が目立つ
国家公務員一般職技術系全体の受験申込者数が、近年、減少傾向にありますが、24年度に土木区分で受験申込をしたのは819人と、18年度の1,659人から半減しており、23年度と比較しても236人も減少しています。技術系全体に占める割合でも18年度の30%から23%と急落している状況です。
建築区分の受験申込者数も18年度比で52%減となる136人で、23年度比でも27人減でした。
下図は人事院発表の2022年度から2024年度にわたる、国家公務員一般職(土木区分、建築区分)の採用試験実施結果を、グラフ化したものです。
人事院では民間との採用競争激化が国家公務員志望者減少の原因と見ている
少子高齢化による技術者の減少や、24年4月に適用された時間外労働の上限規制を背景に、建設業界の人手不足は逼迫した状態にあり、土木・建築分野の技術者需要は大きく伸びています。
そのため、民間建設会社は積極的な採用活動を展開して、インターンシップの実施や早期選考などで人材確保に力を入れています。特に施工管理は、23年度の求人件数が16年度と比較して約5倍に増えているなど採用競争は激化しています。
業界大手が早期に内々定を出して、公務員採用試験の応募が行われる前に対象の学生を囲い込むような状況がありますので、「国家公務員第一志望」の学生を育てていく必要があるのかもしれません。
国家公務員も初任給の増加や働き方改革への取り組みを進めていく
採用競争激化や、賃上げを実施した企業が公共入札で優遇される政府の施策もあり、民間の建設会社は給与上げ幅が大きくなっています。鹿島や大林組は、24年度の大卒初任給を23年度比3万円引き上げて28万円としました。これに清水建設と大成建設も追随する動きとなっています。厚生労働省の23年度賃金構造統計調査によれば、建設業における大卒初任給の平均は24万600円です。
人事院では、24年8月8日に初任給増額を勧告。一般職大卒で2万3,800円増の22万円、総合職で2万9,300円増の23万円としたほか、全職員を対象に給与引き上げを求めました。未だ民間との賃金格差はありますが、「約30年ぶりとなる高水準のベースアップ」としています。
国土交通省の調査によると、残業が月45時間を超える本省・外局勤務の職員は20年度から22年度まで20%程度と横ばいになっており、民間建設会社よりも長時間労働が多く、今後、働き方改革に向けて、職場環境の見直しを進めていくとしています。
国土交通省による採用強化
国のインフラを守る重要な役どころでありながら、学生には職務が見えにくい点はあり、国土交通省は採用活動強化策として、現場見学会を積極的に開催したり、社会人採用に力を入れたりしています。地方整備局でも経験者採用を開始しています。
国家公務員は自治体の地方公務員採用とも競合する面がありますが、広い知識が必要とされるゼネラリストとして、また国の施策や直轄事業を実行するスペシャリストとしての活躍も期待できる仕事として、興味を持つ皆さんは視野を広げてみて良いのではないかと思います。
(本記事は総合資格naviライター、kouju64が構成しました。)