[ゼネコン]の基礎知識2024

ゼネコンとは?

ゼネコンは、「General Contractor(ゼネラル・コントラクター)」を略した用語です。

直訳すれば「総合請負業」ですが、日本では一般に「総合建設業」と呼ばれています。

ゼネコンは各種の土木一式工事や建築一式工事を発注者から直接請負います。「一式工事」とは、元請者として総合的な企画・指導・調整を行い、土木構造物や建築物を竣工まで導く工事のことで、下図のように複数の専門工事業者と下請契約を結び、工事全体のとりまとめを行います。

 

土木から建築まで。大規模建設物を竣工に導く、ゼネコンの施工能力

ゼネコンは役所や駅などの公共建築、ビルやマンション、商業施設などの大規模建築工事のほか、道路やダム、トンネルなど土木工事も手がけています。

基礎や躯体、内・外装、設備といった専門分野ごとに、専門工事業者(下請)に工事を発注し、これらを統括し、決められた期限内に、設計図書通りに建物や土木構造物が完成するよう、工程管理を担うほか、安全管理や品質管理、法令順守など建設現場全体を監督します。また建設予算を決めて工事を請け負っているため、原価管理も重要な役割となっています。

大規模工事では出入りする技能労働者の数が数百人から数千人に及ぶこともあり、質の高い建設物をつくり上げるために、どう現場を切り盛りするかがゼネコンの腕の見せどころになります。

デザインビルドなど、基本設計から関わる建設工事が増えている

日本では公共建設物は「設計・施工分離の原則」により、ゼネコンは、上図の工事請負者として施工に軸足をおき、基本設計は土木工事では建設コンサルタントなどが、また建築工事では組織設計などが担うことが通常の流れでした。

近年は、基本設計から施工までを一括で発注する「設計・施工一括発注方式」や、実施設計から施工までを一括発注する「デザインビルド方式」の需要が増えてきました。

これらのメリットは基本設計段階から、ゼネコンが有する施工ノウハウや固有技術を取り入れて、建設資材の選択、発注を想定した設計や、設計段階から準備工事に入ることができるなど、工事期間の大幅な短縮やコスト減が期待できることです。

今後は企画段階・基本設計段階から、建設コンサルタントや設計事務所とゼネコンが協働していく方式の工事案件がますます増えていくことでしょう。

日本のゼネコン

日本では第二次世界大戦後の高度経済成長期に建設需要が飛躍的に伸びたことで、ゼネコンが急成長を遂げました。

一方で高額な建設物を一品生産する建設工事の請負は、需要や景気に大きく左右される側面があり、安定的、計画的に経営遂行できない面があります。バブル崩壊後の需要低迷や構造改革による政府の公共事業縮小などが原因で、1990年代後半から2000年代初頭までは準大手ゼネコンまで経営破綻に追い込まれる場面がありました。

近年では健全経営や事業効率化を目的とした経営統合など、業界再編の動きが見られます。ゼネコンから専門工事部門を分社化、子会社化したり、事業合弁により複数の専門工事部門から新たな専門工事業者が組織されたりする動きもありますし、大手ハウスメーカーが総合建設業に積極参入していることから、ゼネコンをグループ傘下にする動きもあります。

スーパーゼネコン

日本の総合建設業大手5社は、その歴史と規模からスーパーゼネコンと呼ばれています。会社規模では、企業単独の従業員数で8,000人から1万人程度、売上高(単独)は1兆数千億円を超える水準にあります。

スーパーゼネコンは各社が設計部門・エンジニアリング部門・研究開発部門を擁しており、建設に関する幅広い技術開発を行い、いまなお成長を続けています。

下図に掲載する、鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店がスーパーゼネコンです。

欧米の建設業界では、設計業と施工業はそれぞれが別会社となっており、明確な分業体制をとっているため、日本のスーパーゼネコンは世界的にみても、かなり特殊な存在となっています。建築・土木を牽引するスーパーゼネコンですが、平均では建築75%、土木25%程度の売上比率となっています。

 

以下、スーパーゼネコン5社の概略を紹介します。

〇鹿島建設

1840年(天保10年)設立と永い歴史がある鹿島建設は、「進取の精神」を理念として、国内で初めて鉄道工事を請負い、日本初の高層ビル(霞が関ビル)を建設するなど先駆的な事業に取り組んできました。

建築では、東京駅丸の内駅舎(復元・再建工事)や東京ミッドタウン日比谷、お台場フジテレビ本社ビルなどが近年の代表作ですが、土木工事でもトンネル、ダム、上下水道などに強い企業です。近年は海外展開に積極的で、260社を超えるグループ企業で事業領域を拡げています。

近年は人手不足対策として、生産性向上に取り組み、建設機械の自動化や「鹿島スマート生産」による生産プロセスのデジタル化など建設DXを推進しています。

〇大林組

大林組は1936年設立で、関西発祥。従来の建設業のイメージに固執せず、「土木・建築・エンジニアリング・原子力・ロボティクス・新領域」と多面的に技術開発を行い、事業展開を進めています。

東京スカイツリーや六本木ヒルズ森タワー、大阪城など、地域や時代を象徴する建物を数多く手がけているほか、近年は再生可能エネルギーやSDGs(持続可能な世界の実現に向けた目標)達成への貢献を方針として明記して、「地球・社会・人」と自社のサステナビリティを追求しています。

2022年5月、神奈川県横浜市に「これからの知を育む場」をコンセプトとした自社の次世代型研修施設として、高層純木造耐火建築物「Port Plus」を建設しました。「Port Plus」は、全ての地上構造部材(柱・梁・床・壁)を木材としており、純木造耐火建築物としては、国内最高となる高さ44m(11階建て)です。

〇清水建設

清水建設は1937年に設立し、「宮大工」を起源とする個性的なスーパーゼネコンです。特徴的なのは、「ものづくりにこだわる社風」で、特許技術を多く持ち、他企業に真似ることができない技術開発に注力しています。

代表的な施工実績は、長崎オランダ村ハウステンボスや横浜マリンタワー、サンシャイン60、モード学園コクーンタワー、歌舞伎座タワー等。

「子供たちに誇れるしごとを。」を自社スローガンとして、都市開発や伝統建築、社寺建築など未来に伝統文化を伝える事業に意欲的に取り組んでいます。

〇大成建設

設立は1917年。スーパーゼネコンで唯一、非同族経営を行っており、風通しのよい社風といわれています。傘下には「大成建設ハウジング」があり、以前から住宅事業へ取りくんでいます。再開発や施設運営などの都市開発事業に注力しており、市街地再開発事業では市場の20%を占有するなど、新事業展開よりは本業集中で売上を伸ばしています。

主要な施工実績に、東京芸術劇場や新 江の島水族館、羽田空港国際線ターミナル、新宿センタービル、東京オリンピックのメイン会場となった新国立競技場があります。

〇竹中工務店

創業は、1610年(元禄16年)にさかのぼり、415年の永い歴史がある企業です。また、他のスーパーゼネコンと違い、土木分野は関連企業の竹中土木が受注しているため、売上のほとんどは建築事業となります。

職人気質といわれるほど、建築事業に注力している竹中工務店ですが、特に設計部門が大手組織設計事務所に匹敵する実力を持つのが特徴です。独特の雰囲気をもつ意匠性の高い、高品質な設計が魅力で、出江寛、菊竹清訓といった有名な建築家を輩出しています。

施工実績は、日本武道館、東京タワー、現在、最も高い超高層ビル「あべのハルカス」など。竹中工務店の設計力がみなぎっています。

準大手ゼネコン

スーパーゼネコンにつぐ企業規模で、従業員数は2,500人から5,000人程度、売上高(単独)は概ね3,000億円から1兆円までの水準にある、全国展開をしているゼネコンです。土木・建築・不動産開発など大型工事を手掛けますが、マンション建築首位の長谷工コーポレーションなど、各社が得意とする工事分野をもつことも特徴的です。

具体的な企業は下図に掲載し、各社の得意分野も併記しています。

中堅ゼネコン

全国展開しているゼネコンで企業規模は従業員数が1,000人から2,500人程度、売上高(単独)は概ね1,000億円から3,000億円程度の水準となります。

中堅ゼネコンは下図にまとめていますので参照してください。

 

地場ゼネコン

地場ゼネコンとは特定エリアに根差したゼネコンを意味します。略して地場コン(ジバコン)とか地方ゼネコンと呼ばれることもあります。

建設業の中で、地元の優良企業として地方自治体発注の公共工事や地元教育施設、商業施設などを元請として、あるいは大手ゼネコンと共同で施工実績を多く有しています。また大規模工事以外に、住宅や一般商店まで。新築から改修まで、幅広く施工実績をもつ企業もあります。

入職は地元私立大学や工業高校から新卒採用しているほか、Uターンなどで転職入社している人材も多く、地元就職を希望する人たちの活躍の場となっています。

世界のインフラ整備に貢献。グローバルに活躍する総合建設業

日本の総合建設業がもつ施工技術は国際的にみても高い水準にあり、海外建設市場で存在感を示してきました。下図は海外建設協会の統計による「海外建設受注実績推移」ですが、海外工事受注は、2004年度以降、中東地域を中心として大幅に増加し、その後の世界的な景気後退の影響により急減しました。

 

引用元:日本建設業連合会 デジタル建設ハンドブック

2010年度以降はアジアを、2014年度以降は北米、欧州、大洋州等を中心に増加に転じて、2019年度には2兆円を超えましたが、2020年度には新型コロナウイルス感染症の影響で1.1兆円と急減しました。

しかし2022年度は再び2兆円超と回復し、2023年度には2兆2907億円と最高額を更新しています。

地下鉄や高速道路、空港、高層ビルなど、日本式インフラは高い評価を受けており、ゼネコンには、世界を舞台に活躍するチャンスがあります。

 

(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました。)