[建築設計事務所]の基礎知識2024

建築設計事務所の仕事とは?

建築設計事務所とは、建築主(施主)の要望を聞きながら建物や設備の設計を行い、設計図書通りに施工されているか監理する企業のことを指します。

建築設計の業務内容としては、建築物の「計画、立案、設計・工事監理」があり、業種分野は、「意匠設計・構造設計・設備設計」に分かれ、また設計事務所によっては、建築積算やインテリア設計、マネジメントなどを行う場合もあります。

設計事務所によってどの分野を得意とするか、また専門としているかは異なります。

下図にまとめていますので、ご確認ください。

 

 

建築設計事務所の業務フロー

建築設計事務所が具体的にどのような手順で設計業務を進めていくのか、下図「業務フロー」にまとめています。

 

 

建築相談とは

建築相談では、建築主(施主)の目的や希望を確認し、要求性能を整理し、予算をたて、法的な制約を確認し、敷地条件・地盤条件などの現地調査を行い、その後の設計作業に繋げていきます。

ここでは細かな設計を行うわけではなく、建物規模やおおまかな構想、デザインなどを施主に示していきます。施主の了解が得られ、正式発注を受けたら、建築設計契約を締結します。

基本設計とは

基本設計では、平面図や断面図、立面図といった一般図を主とします。

この段階では、都度図面や資料を確認しながら施主と打ち合わせを行い、要望や予算とのバランスを見ながら各種仕様を決めていきます。また法的事項をクリアしておく必要があります。

施工者が決定している場合は、施工者も交えて打ち合わせを行うことでより経済的な設計を目指す場合もあります。

実施設計と建築確認申請

実施設計では、基本設計に基づいて、より詳細な設計図書の作成を行います。

「構造設計」、「設備設計」も詳細な計画を進め、意匠設計図、構造設計図、設備設計図といった設計図書の作成を進めます。これらを「実施設計図」と呼び、この図面をもとに施工者と工事契約を進めて施工に着手することになります。

ただし、建築物の工事を開始するためには、当該建築物の「建築確認申請」を建築主事または指定確認検査機関へ提出し、受理される必要があります。

建築確認申請が受理されると「確認済証」が発行されます。これが工事着手OKの合図です。

工事監理について

工事期間中は各段階で設計図書通りの施工が行われているか、「監理者」が現場に立ち会いチェックをします。そのほか、品質書類などの書類チェックも行います。

この監理業務は、設計者とは別の会社(設計事務所)が受託する場合もあります。

竣工検査と引き渡し

建築工事の最終段階では、監理者と施工者が専門家の立場で検査を行い、建築主を交えて施主検査を実施します。問題点がみつかれば修正営繕を行い、再確認で問題がなければ、いよいよ竣工して引き渡しとなります。

建築設計事務所の種類

建築設計事務所を営むには、建築士有資格者を管理建築士として、都道府県に「建築士事務所登録」を行う必要があります。建築士事務所には、一級建築士事務所、二級建築士事務所、木造建築士事務所があり、二級建築士事務所と木造建築士事務所は、設計できる建物の規模、構造が制限されています。

建設会社や工務店、ハウスメーカーも、業務として建築設計を行う場合は建築士事務所登録をする必要があります。

建築設計を専業で行う設計事務所は、下図のように主要業務の系列で分類されます。

組織設計事務所とは

組織設計事務所は、意匠設計・構造設計・設備設計・工事監理・プロジェクトマネジメント部門など、各部門を自社に持ち、建築設計に関する一連の業務を手掛けています。国内の大規模建築や公共建築物の多くを組織設計事務所が設計しており、日建設計、日本設計、三菱地所設計などが、その代表的な企業となります。

アトリエ事務所とは

アトリエ事務所は、建築家の理念や個性を色濃く反映した、意匠を中心とする設計業務が特徴です。

建築家の磯崎新氏が、1963年に丹下健三研究室(現丹下都市建築設計)を退職し、自身の事務所を設立した際、「磯崎新アトリエ」と名付けたのが、アトリエ事務所といわれるようになった始まりですが、最近は、建築家個人の名前が付いた事務所でも、「隈研吾建築都市設計事務所」のように、100人を超えるスタッフを擁する大規模組織もあります。

従来は、アトリエ事務所の扱う案件は、個人住宅など小規模のものが多かったのですが、近年ではアトリエ事務所が基本設計や監修を担当する形で、組織設計事務所、大手ゼネコンの設計部と協働する例が増えています。

公共建築の設計や、海外で多く実績を持つアトリエ事務所では、入社後に大きな仕事ができるチャンスがあるでしょう。

またアトリエ事務所は、一通りの経験を経てから、独立を目指す設計者が多く進む道でもあります。

独立開業には管理建築士取得が必須

設計事務所として独立開業するには管理建築士を取得する必要があります。管理建築士は建築士資格を取得して3年以上の実務経験を積んだのち、管理建築士講習を受講して修了する必要がありますが、実務経験は建築士の種別を問わないので、建築士(一級・二級・木造)を取得すれば、早く管理建築士になれる道が開けてきます。

そこで過去には、「入社後はまず仕事を覚えるのが優先で、一人前になってから建築士取得へ」という話もよく聞かれましたが、最近では将来のために、一級建築士、二級建築士の早期取得を目指す人が増えています。

建築設計を業務として行うには、建築士取得が必要で、無資格では補助業務しか担当することができません。早く有資格者になって、建築士としての実務を経験することで、知識や倫理観が兼ね備わった技術者を目指すのが良いでしょう。

また上位資格として、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士に早くチャレンジすることもできるようになります。

 

(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました)