[不動産会社・デベロッパー]の基礎知識2024

不動産会社とは

不動産とは、土地や建物などの動かすことのできない財産のことです。 民法第86条第1項で「土地及びその定着物は、不動産とする」と定義されています。 定着物とは簡単に移動させられないもので、建物や立木、橋、石垣などが該当します。

この不動産に関して多岐に渡る業務を行う企業は「不動産会社」と総称されていますが、その数は「公益財団法人不動産流通推進センター」によると、全国で大手から中小迄で、37万8千社を超えるとされています。

不動産会社の主な事業は宅地建物取引業で、宅建業法では「不動産の売買、交換、賃貸、管理および、これらの代理・媒介(仲介)」と定められています。

デベロッパーは不動産の企画・開発で新たな価値を創出する

不動産会社の中でも、企画・開発事業を行う企業は「デベロッパー」と呼ばれています。企画・開発事業とは、用地を取得して、まちの再開発やリゾート開発、商業施設開発・マンション開発・大規模宅地開発などを行うことで、デベロッパーは、開発した不動産を分譲したり、賃貸したりすることで収益を得ることをビジネスモデルとして事業展開しています。

下図は「デベロッパーのビジネスモデル」を表示したものです。ここでの顧客は個人だけではなく、法人を顧客とする場合もあります。

デベロッパーの事業は、「用地取得、企画・開発、販売(賃貸)、管理」のプロセスで、開発物件ごとにプロジェクトを組んで進められていきます。事業の流れや役割を解説します。

1.用地取得

用地取得にあたっては、不動産流通会社や地権者から情報を集め、現地調査などで開発に適した土地かどうかを検討します。適していると判断した場合には地権者と交渉を重ねて、土地を取得します。市街地では地権者が複数いる場合が多く、用地取得には数年以上かかることが珍しくありません。

2.企画・開発

取得した土地の歴史や周辺環境に合わせて、開発の方向性やコンセプトを十分考慮して、その土地を活かした建物計画を立てていきます。これが「企画」と呼ばれる仕事です。

企画した計画やコンセプトに基づき、建物の設計図や外観、内装などのデザインをまとめていくのが「開発」と呼ばれる仕事になります。

具体的な設計やデザインを決めていく段階では、外部の建築設計事務所や建築家・デザイナーと連携をしていきます。主要な設計やデザインが決定したあとは、ゼネコンなど建設会社が工事を進めて企画を形にしていきます。

デベロッパーは工事を直接行うことはありませんが、施主として建設会社に建築工事の発注を行い、進捗管理や品質確認などで竣工まで関係者を牽引していきます。

3.販売(および賃貸)

開発物件は不動産流通会社などの協力を得て、入居や出店の可能性がある企業、(小売業・飲食店・医療機関など)をリサーチして営業活動を行います。

オフィスビルや商業施設の場合は、テナント賃料がデベロッパーの収益源となり、マンションや住宅地の場合は、賃料に加えて分譲収入が大きな収益源となります。

4.管理

開発物件は建てて終わりではなく、竣工後は物件の価値を向上させるために、地域住民や入居者・テナントと良好な関係を継続していきます。このような運営や維持管理を担うのが管理の仕事です。

デベロッパーの種類と系列

幅広く、さまざまな用途の施設を企画・開発して、まちづくりに取り組むデベロッパーは「総合デベロッパー」、特定の建物に特化したデベロッパーは「専門デベロッパー」と呼ばれます。ただし主要な業態を指した用語であり、両者に明確な区別があるわけではありません。

総合デベロッパー大手に多い「財閥系」企業

大手総合デベロッパーには、旧財閥系の潤沢な資金力と営業力を背景に、長い歴史と豊富な実績をもつ「財閥系」と呼ばれる企業があります。

業界最大手の三井不動産は、日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」や「東京ミッドタウン日比谷」などで知られ、近年も日本橋を中心に再開発を手がけています。三菱地所は大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアの再開発に注力しており、近年では東京駅前に「TOKYO TORCH 常盤橋タワー」が竣工しました。2027年度には隣接する場所で「Torch Tower」の竣工を予定しています。住友不動産は東京都中心部にオフィスビルを多数保有する一方で、分譲マンションや住宅リフォームの「新築そっくりさん」など幅広い事業展開を行なっています。旧安田財閥系の東京建物は都心のオフィスビルを主力に「ブリリア」ブランドのマンション分譲を進めています。

財閥系デベロッパー大手4社について、下図にまとめていますのでご参照ください。

財閥系以外で都心地盤に強い野村不動産、森ビル、ヒューリック

総合デベロッパー大手5位の野村不動産は、大手証券会社、野村證券から分離、独立した不動産会社です。新宿野村ビルをはじめとしたオフィスビルや分譲マンション「プラウド」を主力に展開しています。

また六本木に本社を置く、森ビルは東京都港区を中心に、大型再開発施設であるアークヒルズや六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズ、商業施設のラフォーレ原宿や表参道ヒルズなどの運営で知られています。

日本橋に本社を置くヒューリックは、みずほファイナンシャルグループ系列で、旧富士銀行の店舗、社宅等を多く保有しているほか、駅周辺の中規模オフィスビルや商業施設を多く手がけています。

主要駅周辺や沿線に強い「鉄道系不動産会社」

総合デベロッパー大手で、渋谷再開発に強い東急不動産をはじめとして、「電鉄系」ともいわれる鉄道会社資本のデベロッパーがあります。

また、不動産開発は鉄道会社本社が行い、その不動産の販売・仲介・運営・管理を担う「鉄道系不動産会社」が全国に多数存在します。これら鉄道系企業は、主要駅を中心とした不動産開発に強いのが特徴です。

総合大手から専門デベロッパー、ハウスメーカーまで。多数が参入しているマンション分譲事業

マンション分譲では、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、東急不動産ホールディングス、野村不動産ホールディングスが上位に入り、不動産開発をリードする総合デベロッパー大手とほぼ同じ系列会社が牽引していることがわかります。

マンション用地を確保することは大変ですが、大手総合デベロッパーは、開発事業を通して多くの土地情報を得ているので、分譲機会に恵まれていることがその要因です。

その他、独立系の野村不動産や大企業系列の大成有楽不動産、NTT都市開発といった準大手、マンション専業となる大京、穴吹興産、コスモスイニシア、プレサンスコーポレーション、ハウスメーカー系の大和ハウス工業、積水ハウスなどが売上実績上位を占め、次に鉄道系不動産会社が続きます。

デベロッパー業界の課題と将来展望

現在デベロッパー業界が抱えている大きな問題としてあげられるのが、日本全体の人口・世帯数の減少、そして高齢化です。我が国はマンション需要の減少期を迎え、政府は人口の東京一極集中を見直して、企業も大都市中心の拠点展開から、地方に本社機能やサービス拠点を移していく傾向がありますので、長期的に見るとオフィス市場は次第に縮小していくと考えられています。

これまでも時代に合わせて事業を変化させてきたデベロッパー業界は、今後は人口問題や都市・まちの再整備を考慮した上で、事業環境を変化させて競争力を強化していくことになるでしょう。

今後、新たな需要として期待されているのが、高齢者向けの居住施設です。これまでの複合開発・街づくりの知識は、高齢者向け住宅を核とした、持続可能なまちづくりに活かすことが期待されています。これからの高齢化社会では、家族のあり方や新しい生活などを提案していくことが必要な事業領域とも言えるでしょう。

もう1つはエリアの価値向上です。大手デベロッパーは現在も一等地に物件を保有している場合が多く、今後もテナントや消費者のニーズに合った再開発や商業施設のリニューアルを行なっていくことで、エリア価値の向上が期待できます。

人口減少社会では、主要駅を中心に「高齢者が歩いて行ける」範囲で、日々充実した生活を過ごせるような、新たな都市づくりが求められており、生きがいを感じられる参加型イベントや、マルシェといったソフト面のマネジメントを行うことで、地域の付加価値を向上させ、「住みたい。働きたい」と思われるような地方都市を創ることが重要とされています。

そして今後もデベロッパーが力を入れていくと考えられているのが海外進出です。

海外の中でも、東南アジアは今後の発展が期待できる国が多く、土地と物件の需要がとても高いのが特徴です。現在アジアの諸都市では、オフィスビル、住宅といった個別物件の開発が先行しているため、今後は大手デベロッパーが得意とする複合的な再開発・街づくりのノウハウを活かす機会が十分にあると考えられています。

 

(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました)