海洋工事を専門とする「マリコン」ってどんな業界?

マリコンとは海洋土木工事と港湾建築工事を専門とするゼネコンをいう

マリコンとは、海洋土木工事や港湾施設の建築工事に特化した専門性と高度な技術、経験、実績を有した総合建設業者を指す用語で、「マリンコントラクター/marine contructor」の略称です。

海洋土木工事を行うには、浚渫船や起重機船、深層混合処理船など大型の専門船や専門的な技術が必要になるため、中小建設会社は参入が難しく、ほとんどのシェアを大手企業が占めています。

海洋土木工事の特徴と魅力

1.スケールが大きい

とにかく工事のスケールが大きいのが海洋土木の特徴です。船の航路を守るために行う浚渫は、浚渫船で行います、また時には重さ80トン・高さ5メートルの消波ブロックを起重機船で運んで設置したり、10トンダンプ2,000台分もの土砂を削り護岸工事を行ったりします。

2.大規模な建築工事と一体の工事が多い

プロジェクトによっては、大規模建築工事と一体となっていることも多いのが海洋土木の特徴です。そこで大手は海洋土木だけではなく建築事業も行っています。

3.社会インフラに貢献でき、やりがいがある

護岸や防波堤の設置、海洋ケーブルの補強や設置など社会インフラに大きく貢献しているのも海洋土木の特徴です。人々の生活を守る身近なものを建設したり補強したりして、やりがいを感じられる仕事となっています。

4.海外工事が多い

海外工事が多く、大規模なものになると、他国企業との共同プロジェクトになります。世界中のインフラ整備に携われるため、達成感・充実感を得られるのも魅力となるでしょう。

海洋土木工事の種類

海洋土木工事の主な種類を7つ紹介します。

1.埋立工事

埋立とは、陸上や海底で採取した土砂や廃棄物などを、海底に投入して土地を造成することです。

2.浚渫工事

大型船が安心してすすめるように、海底の土砂などをすくい上げて整備することを浚渫(しゅんせつ)と言います。海底を掴んで掘り下げるグラブ浚渫と、海水と土砂をホースのようなもので吸い上げるポンプ浚渫の2種類があります。

3.防波堤工事

波からの被害を抑える堤防も、海洋土木工事により行われています。港湾工事のひとつとして、防波堤の設置が挙げられます。

4.護岸工事

護岸工事とは河岸を守る工事です。護岸工事により、災害による河川の増水で堤防が削られてしまうのを防ぐことができます。根固ブロック、覆土ブロックを使い、河岸を強化して人々の安全を守ります。

5.橋梁基礎工事

橋梁とは橋のことです。海洋土木工事では、橋の基礎工事を請け負っています。誰もが安心して利用するためには、頑丈な基礎を作ることが必要不可欠です。杭を打ち込み基礎をつくり、土台となる枠を作ってからコンクリートを流し込みます。コンクリートが固まってから枠を外し、橋脚を作る段階に進みます。橋脚を作ったら、基礎となる部分は完成です。災害により被害を受けた橋の復旧なども行っています。

6.海底トンネル工事

海底トンネル工事も海洋土木工事のひとつです。海底トンネルには、沈埋函施工技術が取り入れられています。

7.海底工事

ダイバーが海底に潜り、行う海底工事も海洋土木工事の種類のひとつです。埋設深度調査を行い、海底ケーブルの補強や埋設などを行います。海洋ケーブルは天候の影響を受けづらく、通信衛星よりも早く大量のデータを通信することが可能です。

港湾施設とは

港湾施設とは、港湾の運営や安全、環境を守るために必要な施設の総称ですが、具体的には、港湾法で以下のような施設が規定されています。

1.水域施設:航路、泊地、船だまりなど

2.外郭施設:防波堤、防潮堤、堤防、護岸、導流提など

3.係留施設:岸壁、物揚場、係船浮標、桟橋、埠頭など

4.臨港交通施設:港湾道路、臨海鉄道、運河、駐車場など

5.荷さばき施設:荷さばき地、荷役機械、上屋など

6.旅客施設:旅客乗降用施設、旅客ターミナルなど

7.保管施設:倉庫、野積場、コンテナヤードなど

8.船舶役務用施設:給水施設、給油施設など

9.航行補助施設:航路標識、信号施設、照明施設など

10.環境整備施設:廃棄物施設、廃油処理施設など

これら港湾施設は、港湾の機能を支え、船舶の安全な航行や貨物の効率的な取り扱いを可能とします。

マリコン業界大手企業について

マリコン大手企業について下図にまとめておりますので確認してください。

以下が各社の概要となります。

五洋建設株式会社

日本の準大手ゼネコン。海外大型工事の先駆で、海洋土木最大手としても知られる。近年は陸上土木事業・民間土木事業にも力を入れていて、海洋土木事業(特に浚渫)を得意とし、エジプト・カタール・イラン・シンガポール・韓国・香港・マレーシアなど多くの国で受注・施工実績がある。

東洋建設株式会社

本店を大阪市中央区に、本社を東京都千代田区に置く総合建設会社。三水会とその後身社長会である水曜会、および、みどり会のメンバー会社で三和グループに属している。インフロニア・ホールディングスの持分法適用会社。海洋土木大手で、陸上・建築・海外へ展開しています。

若築建設株式会社

東京都目黒区に本社を置く建設業者。本店は福岡県北九州市で九州地盤で発祥。

浚渫や埋立といった港湾工事を得意とし、羽田空港D滑走路や那覇空港といった海上空港、東京湾横断道路(アクアライン)、明石海峡大橋、沖縄初の那覇海底トンネル工事など、大規模プロジェクトに参画している。

東亜建設工業株式会社

東京都新宿区に本社を置く総合建設会社。創業100年以上の総合建設会社であり、かつての浅野財閥の流れを汲む企業の1つ。地盤改良工事に定評あり。

まとめ

マリコンは海洋・港湾工事に特化していることから、受注は公共工事主体で工期も長く、また専門性が高いために、民間建築工事のような激しい競争がありません。そこで一般的な総合建設業に比べると経営は安定していることがあげられます。

スケールが大きな工事となるために、竣工を迎えたときの達成感が高く、やりがいもたいへん大きくなりますが、反面、港湾や沿岸などの現場で長期間勤務を継続していくことは、決して楽ではありません。

建設系大学には海洋土木系学部学科もありますが、ごく少数に過ぎず、企業は新卒入社後に、専門知識や技術を修得できるように、順次、教育・研修を行っています。

 

(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました。)