特集【5】社会資本(インフラ)老朽化問題・現状と課題【建設知識土木編】

社会資本(インフラ)の現状と将来予測

我が国の社会資本(インフラ)は高度経済成長期に集中的に整備され、今後急速に老朽化することが懸念されています。今後20年間で、建設後50年以上経過する施設の割合は加速度的に高くなる見込みです。インフラの耐用年数は一般的に約50年といわれており、2040年時点では、河川管理施設の約38%、港湾施設の約66%、道路橋の約75%が建設から50年以上を経過する見込みです。

このように一斉に老朽化する社会インフラは、維持管理を万全に行わなければ、その機能を損なうだけでなく、崩落や倒壊といった事故の原因になります。整備を進めるには、多くの時間と多額の費用がかかることもあり、現状では十分な整備が遅れています。

社会資本(インフラ)が直面している深刻な課題

インフラ施設は、国や地方自治体によって管理されていますが、次のような深刻な課題に直面しています。

維持管理費の不足

日本では少子高齢化や人口減少が急激に進み、社会インフラの維持管理費は、1993年度の約11.5兆円をピークとして減少してきました。現在の財源はピーク時の約半分となっています。そのため、できる限り支出を抑える方向で検討されています。

技術系職員の減少

一方で技術系職員が減少していることも課題となっています。技術系職員が5名以下という市町村は全体の半数近くを占めており、施設管理者の技術力向上、そして業務の効率化に向けた対応が検討されています。もちろん若手職員の採用、育成も大きな課題です。

インフラ老朽化への対策

「予防保全」で不具合が生じる前に強靭化を進める

これまでは、インフラ施設に不具合が生じてから修繕等を行う、「事後保全」を基本としてきました。しかし、修繕にかかる費用が多額になるほか、復旧までに時間がかかり、その間はインフラが使用できなくなってしまいます。

そこで、近年は不具合が生じる前から強靭化を進める、「予防保全」へ転換が進められています。これは、維持管理や更新に必要な費用を削減することが目的です。

さらに、「インフラ長寿命化計画」の策定により、ライフサイクル延長を目的とした、継続的な取り組みが盛り込まれたり、インフラ施設の多目的利用を推進することで民間投資を呼び込み、その資金を維持管理費に充当する試みも進み始めています。

人材育成や新技術の活用促進

インフラ施設の維持管理には、人材確保が必要です。そのために官民連携でSPC(特別目的会社)を設立し、その運営を担うことで、自治体職員だけでなく民間企業の専門人材と連携推進を図るといった取り組みも行われています。

また、施設管理者の技術向上や、業務の効率化を目的として、2021年4月、国土交通省は「インフラDX 総合推進室」を発足させました。

ここでは国土交通省と国土技術政策総合研究所、地方整備局などが足並みを揃え、インフラDXを推進すべく、環境整備や、新技術の開発、人材育成などを行っています。

インフラDXの具体策としては、現場の労働力不足を補うために、ドローン技術とAIによる画像診断でインフラ施設の点検を行うことで、問題の早期発見に結びつけると同時に、高所作業で足場を組む必要がないなど、作業時間およびコスト削減につながります。

地域インフラ群再生戦略マネジメントによる「地域間連携」

「地域インフラ群再生戦略マネジメント」とは、自治体が連携してインフラを維持管理する手法です。これは道路、上下水道、河川、公園といったインフラを関連性の高さに応じて「群」にわけ、群ごとに維持管理を行っていく、というのが基本的な考え方になります。例えば、市町村をまたがる川がある場合、一般的には上流と下流で自治体が変われば、管理者も変わります。しかし、群マネでは、上流も下流も「河川」という一つの群として捉えるため、同じ管理者が管理します。

このように自治体が連携することによって、限られた財源や人材を流動的に活用できるようになり、より効率的なインフラの維持管理が可能となります。

まとめ

今後も少子高齢化が進むと予測され、とくに過疎化が進む地方では一人当たりのインフラの維持費が高くなり、現状のまま持続させることが困難となります。その中で、延命化・長寿命化は、インフラの安定稼働をハード面から支える対策といえます。

将来にわたり長くインフラ施設を活用していくためには、最新技術を駆使して維持管理費を抑え、現在の状況下でも運営できる状態に整備することが重要です。

また社会資本(インフラ)は将来に向けて、新たな都市・まちの創設や防災・減災等の必要性から再整備や新設など、今後も需要と課題が尽きないことでしょう。

 

(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました。)