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空間・ディスプレイ業界の基礎知識
空間・ディスプレイ業界とは
ディスプレイとは・・?
一般社団法人日本ディスプレイ業界団体連合会は、ディスプレイを「空間を媒体としたコミュニケーション手段のひとつ。総合的な情報サービスの一環として、快適な空間・環境を創造する総合ビジネス」と表現しています。つまり、空間のデザインをする仕事です。
空間をデザインし、華やかに彩るディスプレイ業界の仕事は、美術系や建築系の学校出身者には大変人気があり、就活においても競争が激しい業界です。次章では具体的な空間について記入します。
空間・ディスプレイ業界を代表する3つの空間について
1.商業施設
・店舗や大型商業施設の内装や装飾
・店舗などの「場所」を示す、看板・サイン・広告
2.イベント・展示会
・東京ビックサイトなどで開かれる展示会や企業の説明会
・派手な演出で空間を盛り上げるエンタメ系イベントやライブの会場
・試験会場の設営などの、短期的な空間施工
3.文化施設
・貴重な展示品を展示する、博物館や美術館などの施設
●その他には、以下のような空間があります。
・豪華なホテルや結婚式場
・ビジネスの環境を整えるオフィス空間
・休日を楽しくするテーマパーク
・何かを象徴する屋外モニュメント
つまり、街を歩けば視界に溢れる、住空間を除くほぼすべての空間づくりに携わっているともいえます。
皆さんが日々の生活の中で自然と触れている世界ですが、空間をデザインし、華やかに彩るディスプレイ業界の仕事がなければ、誰も「場の雰囲気」を楽しむことができないので、実は非常に大切な業界だといえるでしょう。
空間・ディスプレイ業界の職種
空間・ディスプレイ業界では、案件をプロジェクトとして企画し、クライアントに提案を行い、受注したら、デザイン・制作・施工へと進行していきます。この流れの中で各職種が活躍していきます。
●営業・企画
・営業
プロジェクトの窓口として、クライアントに対して、アイデアやデザイン案などをプレゼン提案し、契約を獲得する営業活動を行います。
契約後もクライアントにコンサルティングを行い、社内の各職種と連携しながら、予算管理やプロジェクトの推進管理をします。コミュニケーション、マネジメントなどの能力を必要とする職種です。
・企画
営業と連携して、クライアントとコミュニケーションをとり、プロジェクトの「コンセプト」を考える仕事です。コンセプトをデザイナーに伝える橋渡しの役割も担います。顧客の要望を具現化する能力と表現力、リサーチ力などが必要とされる職種です。
※企業によっては、営業職と企画職を兼ねる場合もあります。
●デザイナー
企画職が立てたコンセプトをもとにデザイン、設計を行い形にする仕事です。図面やパースを作成して、イメージをより具体的に落とし込んでいきます。クライアントが求めるものをつくるために、細かな修正や変更に対応し続けるための美術的なスキルと体力を必要とする職種です。
●制作・施工
デザイナーがつくったビジュアルを形にして、実際の現場で空間をつくる作業をする仕事です。自社で直接つくる場合と、監修・指示をする側で職人さんにつくってもらう場合とがあります。施工段階では、複数の施工業者と一緒に仕事をします。
空間をつくる現場は比較的短期間で、改装だと2~3週間。展示会だと1日や2日で完成させることが多くなります。短い工期で多くの業者、職人が連携する現場となり、納期も延長ができないため、各社間の調整や工期管理は大変ですが、やりがいのある仕事といえるでしょう。
空間・ディスプレイ業界の市場規模
2023年5月17日の「矢野経済研究所」の調査資料によると、2023年度の国内ディスプレイ業界市場規模予測は約1.4兆円で、徐々に、コロナ前の水準へ戻りつつあります。下図が市場規模推移をグラフとしたものです。(グラフは筆者による独自作成)
空間・ディスプレイ業界大手5社
矢野経済研究所の調査によると、業界の市場規模1.4兆円の約18%を大手5社が占めており、乃村工藝社が業界トップとなっています。
下記に大手5社の比較表を掲載します。図表の各社概要は2024年10月現在です。
各社の特徴について後に補足します。
●乃村工藝社
業界トップ企業である乃村工藝社は、1942年創業と歴史も最も古く、従業員数も最も多い会社です。近年ではBリーグのスポンサーや北海道のボールパークプロジェクトのプロデュースなど、空間づくりにおける事業戦略を上流まで展開し、大型案件を獲得し、事業領域を拡大しています。
●丹青社
乃村工藝社と並び、業界を代表する企業の1つである丹青社は、業界の中でもグループ各社と連携が強い企業です。派遣業を主軸とする子会社が人材不足を補っています。また、「JDN(デザイン情報サイト )」というデザイン関連メディアの運用など、乃村工藝社とは違った視点から業界内の事業領域を拡大し、独自のポジションを築いています。
「文化施設」事業に強く、「福井県立恐竜博物館」など、地方各所の博物館や歴史館や重要文化財を取り扱う空間の施工を得意としています。
●スペース
業界3位の売上をもつスペースは、上位2社とは異なり、イベント事業の売上はきわめて少なく、内装分野の割合が多い構造となっています。得意とするのは専門店や商業施設などの分野が中心で、コロナ禍でも特に経営的な大きなダメージは見受けられず、営業利益率は乃村工藝社と並ぶ数値です。
スペースの大きな特徴は、営業・設計・施工というディスプレイ業界の一般的な職種を、基本は1人の担当者が一貫して担当するスタイルです。ディスプレイ業界特有の小規模案件においては、1人の担当者が数百万円~数千万円規模の案件をこなす方が楽しくできるときもあります。
●船場
船場は、商業空間が中心で、特に百貨店などの大型複合商業施設分野に強みがあります。大型商業施設の場合、新築の時から内装工事を受注すると、そのまま館のルールを知っている施工会社に発注する方が発注者も楽なので、大型商業施設の案件の独特な特徴を戦略的に捉えているといえるでしょう。三井系やイオン系などの大型ショッピングモールの案件にほとんどの確率で登場してきます。
船場は、若手の育成、社内のIT化にも積極的に取り組んでいる企業です。
さまざまなことにチャレンジし、文化を取り入れていく姿勢は他のディスプレイ業界のスピード感よりも長けていると感じます。DX分野にも注力しており、今後の成長が楽しみな企業です。
●博展
博展は、現在、業界内で最も勢いを感じる企業で、コロナ禍においてはデジタル事業で大きく実績を残し、事業規模では乃村工藝社や丹青社と比べて小さいですが、手がける空間施工の実績は、数年前までならその2社が担っていたような特殊な空間の施工を近年受注しています。代表も若く、全体の平均年齢も若いのが特徴です。
売上の構成は、イベント産業がほとんどを占め、2023年の「ジャパンモビリティショー2023(旧TOKYOモーターショー)」では、大型ブース案件の受注を獲得し売上が好調となっています。
博展の強みは、自社工場を保有し、現場特有の急な変更やトラブルに迅速に対応できる体制としている点です。
(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました。)