建設技能者に「英国流ジョブ型賃金」・CCUSの利用拡大計画【建設NEWS】

2019年4月から導入された「建設キャリアアップシステム(CCUS)」

建設業界では、技能者の人手不足や能力・経験が適切に評価されないなどといった問題を解決するために、2019年4月からCCUS(建設キャリアアップシステム)が導入されました。

これは、CCUSのシステムに登録した技能者に専用カードを発行し、そのカードを現場に設置されたカードリーダーにタッチすることで就業履歴が蓄積されていくものです。蓄積したデータにより、技能者の経験や資格に応じたレベル判定が行われ、技能や経験に応じた処遇として、レベルに応じた賃金支払いに結びつけていくものです。

またCCUSは社会保険加入の確認や施工体制台帳の作成など現場管理の効率化に活用され、生産性の向上にもつながるものです。

CCUSの概要は下に掲載の図表(出所:国土交通省)の通りです。

2023年から義務化されたCCUS。現在の利用状況は?

一般財団法人建設業振興基金は、CCUS登録普及に向けて、建設事業者や建設技能者、将来技能者を目指す若者にCCUS登録の広報と啓蒙を徹底して進めてきました。その中でも、「建設業界が変わる!新3Kに向け、官民一体で取り組んでいます」とのスローガンが効果的であったと思われます。

新3Kとは「給与(K)が良い・休暇(K)が取れる・希望(K)が持てる」という標語です。

給与はCCUS活用で賃金改善を進め、職人の給与を約18%UPさせる(出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2012年度対比)というもの。

休暇は2024年4月の改正労働基準法に向けた働き方改革で、週休2日の取得と残業縮減を実現する勤怠管理をCCUSで行なうというもの。

希望はCCUS登録で技能と経験を証明し、レベルに応じた4色のカードを発行して、カードの色に応じた賃金支払の実現を目指すというものです。

このレベル別年収モデルは、「英国の全国職業資格制度(NVQ)」を参考にしたもので、英国における職業技能の国家認定制度で「資格イコール賃金」を原則とする本来の意味の欧州的ジョブ型賃金制の根幹を成すものです。英国ではNVQにより企業の枠を超えた職種別賃金相場ができており、資格制度が市場経済とうまく連動しているとのことです。

2023年、CCUSの登録は原則義務化されました。そのため、現在では公共工事、民間工事など、多くの現場においてCCUSの導入が必須となっています。また、従来まで書類で管理されていた従業員の情報も、CCUSの電子方式へと完全移行がはじまっています。

国土交通省によると、2024年8月末現在で、全国の建設業技能者数、302万人中、約半数となる150.6万人がCCUS登録しているとのことです。

また建設事業者は27.4万社が登録済。CCUSカードの現場での利用は増加傾向にあり、就業履歴数は1億5,000万を突破したとのことです。これらのデータは一般財団法人建設業振興基金がとりまとめしています。

しかし、まだすべての工事に導入されているわけではなく、原則義務化をすすめてはいますが、法律上罰則があるわけでもなく、登録をしていなくても入れる現場があるのが現状です。そのような現状を踏まえ、今後はCCUSの義務化が加速するような制度に整えられていく可能性が高いでしょう。

ちなみに現時点では、外国人技能者を雇用している企業だけはCCUSが完全義務となっており、事業者が未登録の場合は入国許可が下りません。

2024年7月、CCUS利用拡大へ向けた3か年計画が制定されました

2024年7月、国土交通省は「CCUS利用拡大に向けた3か年計画」を公開しました。2019年の導入開始から5年間を経て、CCUSの土台となる技能者・事業者の登録が進展したため、今後3年間で、改正建設業法に基づく取組と一体として、処遇改善や業務効率化のメリット拡大を図るというものです。計画の実施状況は最低年一回はフォローアップして、進捗状況を踏まえ、必要に応じて見直しを行ない、あらゆる現場・あらゆる職種でCCUSと能力評価を実施、技能者や建設企業が実感できるCCUSのメリットを拡充していくとしています。

下記に「CCUS利用拡大に向けた3か年計画(ロードマップ)」を掲載します。

「CCUS利用拡大へ向けた3か年計画」を含めた、建設キャリアアップシステムの概要は、国土交通省が公開していますので、詳細を確認したい方は、下記を参照ください。

国土交通省「建設キャリアアップシステム概要」

 

(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました。)