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特集【6】プラントエンジニアリング業界の現状と今後の展望・大手5社の特徴【建設知識 土木編】
プラントエンジニアリング業界の現状
プラントとは?
プラントとは、わたしたちの暮らしを支える素材やエネルギーを生産したり、処理したりする施設・設備全体のことをいいます。プラント施設の種類は多岐にわたりますが、産業、エネルギー、環境、化学の4つに分類されることが多いです。
代表的なプラントは、製品や材料を製造する工場施設、石油やガスなどのコンビナート、上下水道の浄水処理施設などで、複数の施設が有機的に結びついた施設となっています。
プラントエンジニアリングとは?
プラントエンジニアリングは、プラントの企画・設計、原材料の調達、建設工事と試運転、完成後のメンテナンスまで総合的にプロデュースする仕事です。
プラントエンジニアリング業界の現状
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によれば、2022年のプラントエンジニアリング業界の受注高は8兆2204億円で、国内が6兆5008億円(79%)、国外は1兆7231億円(21%)です。2020年度から8兆円台を維持し、微増傾向にあります。
新型コロナウィルスやウクライナ情勢により、大型案件の先送りが発生したり、資材や輸送費が高騰したりしましたが、エネルギー関連の需要が伸びて業界全体としては微増という結果になったと考えられます。
プラントエンジニアリング業界、今後の展望
業界では、国内のプラント建設需要はすでに頭打ちの状況がみえます。新規は電力、廃棄物処理、医薬品など限定的です。ただし今後も既存施設の改修やメンテナンス、施設維持の需要は継続していきますので、一定の需要が見込まれます。
海外でのプラント建設はエネルギー需要の上昇に伴い、受注数が拡大すると予想されます。世界最大の天然ガス産出国である米国では、新たな化学プラントや液化天然ガスプラントの需要が高いです。また、経済成長が著しいアジア・中東では、インフラシステムに関わる電力プラントの需要が見込まれています。
ただ国際市場では、中国や韓国のエンジニアリングが低コストで競合してくるようになっており、品質重視の顧客の取り込みが急務となっています。
プラントエンジニアリング業界は、世界経済や環境意識の高まりなど世界情勢の影響を受ける可能性が高く、グローバルな視点を持っていくことが大切といえます。
プラントエンジニアリング業界の仕事内容
プラントエンジニアリングの主な顧客は石油会社や化学メーカー、国家など誰もが知る大きな組織となります。巨大プラントの建設は、一国の経済、社会に影響を及ぼすプロジェクトとなることもあり、世界へのインパクトは相当に高いものとなります。建設費用は規模によっては、数千億円かかることもあります。そのためプラント建設の打ち合わせは綿密なものとなり、国の政府機関と交渉する機会も少なくはありません。
プラントエンジニアの仕事は、プラント施設の企画・設計、資材調達、システム開発、施工管理と多岐に及びます。それぞれの仕事内容は以下のとおりです。
●プラント施設の企画・設計
生産規模や製品に合わせて最適なプラントを企画提案し、プラント建設の基本設計を行います。全体構造や配置計画が決定したら、建築・電気・配管など専門分野ごとに設計を行います。
●資材調達
設計をもとに発電装置、配管、電気設備、制御システムなどの設備機器や資材を発注します。予算管理や工期に合わせた納期管理、搬入時の検査なども行います。
●システム開発
電気供給システムや制御システムなどプラントを構成するシステムを開発します。IOTなどの最新技術やビックデータを活用するシステム開発が増えており、最新知識が求められる業務です。
●施工管理
プラント建設の施工管理・保全を行います。建設工事の施工管理と業務内容は変わらないものの、危険物などを扱うため高度な技術が求められる仕事です。
プラントエンジニアリング業界で働くメリットとやりがい
●社会貢献度が高い仕事である
社会を支える重要なインフラである石油やガス、電気などのエネルギーや、廃棄物や排水の処理など、プラントは社会基盤の根底となる設備です。その建設に携われる業務は社会貢献度の高さが実感でき、やりがいを感じる仕事といえます。
●海外で活躍できる仕事である
プラントエンジニアリング企業は、海外でのプラント建設に主軸を移しています。大手では海外の売上比率が7割以上という企業も多く、海外赴任や海外出張が多い業界です。グローバルなビジネスに携わりたい方はやりがいを感じられるでしょう。
●地図に残るものを作れる
プラントは広大で何もない土地に建設され、その場所に長く残ります。地図に残るものを作れるため、自分の成果を実感しやすく達成感が得られるでしょう。
事業規模が大きく、スケールの大きな仕事に携わっている満足感を得られるのも魅力です。
●スキルを身につけて成長できる
海外赴任や出張が多く、海外の関係者と接する機会が多いため、語学力やコミュニケーション力を鍛えられます。またプラント建設は、大規模なプロジェクトに携わるため、リーダーシップを求められる仕事でもあります。仕事を通じてマネジメントスキルがつくなど、日々の成長を実感できるでしょう。
プラントエンジニアリング業界大手5社の特徴
ここでは、プラントエンジニアリング業界、大手5社を紹介します。
下表は筆者が各社の有価証券報告書などを参考に独自に作成したものです。
●日揮株式会社
1928年創業で、総合エンジニアリング業界では圧倒的な最大手です。石油や天然ガス、再生可能エネルギーなど幅広い分野で実績があります。
プロジェクト実績は、80カ国2万件以上に上り、直近売上実績は海外8割となっています。今後は新たな事業展開が期待されているところです。
●千代田化工建設株式会社
1948年創業で、エネルギーと環境の調和を目指し、事業活動を通じてSDGs達成に向けた取り組みを一層強化していくとしています。
事業領域は、LNG、石油などのエネルギーから、化学、環境、省エネ、新エネ、産業設備、ライフサイエンスまでと幅広いです。特に水素に関する技術開発に強みを持ち、水素の大量輸送・貯蔵を可能にする技術は世界的な注目を集めました。
●栗田工業株式会社
1949年創業。水処理プラントのリーディングカンパニーで、あらゆる産業に向けて、水に関する問題を解決するための技術やノウハウを提供しています。
水に関わる「メンテナンス」「装置」「薬品」での事業を展開しています。特に、水処理薬品事業が好調で近年売上高は右肩上がりです。欧米やアジア、南米へも事業展開しており、世界的にも名の知れた企業となっています。
●東洋エンジニアリング株式会社
1961年の創業当時から国外事業への進出を始めており、世界に10のEPC拠点と1つの調達拠点があります。インド、ナイジェリア、インドネシア、タイなど、アジア・アフリカで強みをもっています。
事業領域は、祖業である化学肥料分野を中心に、石油化学や石油・ガス処理、資源開発、発電など多岐におよびます。
●東芝プラントシステム株式会社
東芝プラントシステムは、東芝プラント建設と東芝エンジニアリングが合併した企業です。発電所や受変電施設、上下水道や交通網など、社会インフラ部門に強いという特徴があります。現在は国内市場の売上実績が8割と偏っていますが、現在海外を中心に中小型発電の開拓に注力しており、今後の展開が期待されています。
(本記事は総合資格naviライター kouju64が構成しました。)