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特集【9】国家公務員(技術職)・地方公務員(土木職)の業務とキャリアパスについて【建設知識 土木編】
特集【3】で、「これからの土木行政。土木職の魅力とやりがいについて(2024.09.18)」について解説していました。
本記事では国家公務員(技術職)と地方公務員(土木職)の具体的な業務とキャリアパスについて解説します。
国家公務員総合職(技術系)はジェネラリスト、一般職(土木)はスペシャリストとして活躍していく
国家公務員 総合職(技術系)は、専門的な知識を活かして国の設計を担うジェネラリストとしての活躍が期待されています。つまり、技術系国家公務員の中でも、幅広い知識をもとに管理・統括の役割を担い、国全体の発展に関わる業務にあたるものです。
対して国家公務員 一般職は、現場の最前線を担う、スペシャリストとしての活躍が期待されています。特定分野に特化し、その分野を極める「職人」として、国民の生活の発展に貢献していきます。
総合職と一般職で担う役割は異なりますが、専門知識を活かして活躍する点は同じです。どちらも採用試験に合格して任官するわけですが、採用試験の区分が異なり、総合職試験では6区分に分かれていますが、一般職試験では更に細かい9区分で試験が行われており、各分野の専門的技術・知識を持っているかが問われる試験となっています。
国家公務員 総合職 採用試験の試験区分と採用先
国家公務員総合職(技術系)の試験区分と、主な採用先や具体的な業務例について簡単にみていきましょう。総合職の試験区分(工学)は次の項目に分かれています。
●工学:土木、建築、機械、電気・電子・情報
この内、「土木」で採用試験に合格した場合の採用先は次の通りです。
【主な採用先と業務内容】
■国土交通省
道路や建築物の建設・整備を、用地取得や具体的にどのように整備していくのかなどの技術的な計画、サポート業務を担当します。道路や建物だけでなく、最近では海外のクルーズ船を日本に招致することが課題となっており、クルーズ船が寄港できるだけの港の選定や整備、海外への招致活動なども業務のひとつです。
また、度々発生する自然災害に対する防災と、発生後の復旧対応を担うことも大きな役割です。
■文部科学省
世界15カ国との共同プロジェクトや国際宇宙ステーション(ISS)計画に携わり、宇宙飛行士の技術的なサポートなどの業務もあります。
■警察庁
犯罪捜査に関する工学的研究や、交通事故防止を目指した研究なども行なっています。例えば、技術系国家公務員によって研究、運用されているITS(高度道路交通システム)という技術では、赤信号時に歩行者がなるべく道路上に残らないようにするため、画像処理を用いて歩行者用信号を延長しているそうです。
このほかにも、防衛施設や防衛装備品のメンテナンスを担当する防衛省の業務や、厚生労働省、財務省、環境省など、あらゆる省庁での採用がありますが、「土木」で受験する人は、自身の希望や採用人数により国土交通省に進路をとる人が多いと思います。
国土交通省 総合職 技術職員のキャリアパス
国家公務員総合職(技術系)職員は、幹部候補生として、ある特定の業務分野に重点的に従事して専門性を伸ばすとともに、異動を重ねて、他の分野にも従事することで、総合的な視野から企画立案能力を伸ばせるよう業務経験を積んで、ジェネラリストを目指していきます。
国土交通省の業務分野は下図の通り、12項目にわたります。
出典:国土交通省MLIT Recruiting site
国土交通省 総合職 技術系職員の一般的なキャリアパスは下図の通りとなっており、ローカルからグローバルまで幅広い活躍の場を通じて、新しい視点を身に付けられるようになっています。また経験年数に応じて昇進昇格を重ねていきます。
出典:国土交通省MLIT Recruiting site 「総合職(技術系)キャリアパス」
地方公務員(土木職)の職務
全国から海外まで頻繁に転勤がある国家公務員ではなく、地方自治体に腰を落ち着けて仕事をしたいという人に、地方公務員(土木職)は大変人気があります。
地方公務員土木職の職務は、道路・河川をはじめとする社会基盤分野において、企画・立案、設計・積算、施工管理、維持管理など広範囲にわたります。その職務を遂行するための人材育成は、職員と組織双方で行う位置付けで、多様な職務経験を通じて、幅広い知識と視野を身につけながら適性を見いだすために、「ジョブローテーション」と「職員研修」を継続実施していきます。
下図は例として「愛知県職員(土木職)」が経験する各部門(職場)を掲載していますが、どのようにジョブローテーションを行なうのか解説していきます。
出典:愛知県(土木職)職員のジョブローテーション(愛知県 建設企画課)
■採用から8年間のジョブローテーション
基礎的な技術・知識を習得しながら適性を見出すため計画異動を行なう。
①3箇所の所属を経験する
➁計画・調整業務部門、建設・施工管理部門及び維持管理・施設管理部門のうち、少なくとも2部門を経験する。
③可能な限り、本庁勤務を経験する。
■9年目から主査級昇任までのジョブローテーション
8年間のジョブローテーション基準を満たしていない場合、達成優先で異動を実施。
基準を満たしている場合は、重点ヒアリングで本人の意向や能力・適正に応じた異動を行なう。
地方公務員(土木職)の各職名と役割
業務経験を通して、下図のように昇任を重ねていきます。主査級までは前項通りにジョブローテーションを行ない、主査になると若手職員(技師・主任)の育成指導を担うようになります。課長補佐に昇任すると、難度が高い事務の遂行や若手(技師・主任)に加えて、中堅社員(主査)の指導育成を担務するようになり、管理職に移行していきます。
まとめ
公務員 技術系職員は担当分野が多岐にわたり、公共性が高い業務分野を数多く経験しながら、昇任を重ねていきます。特に土木職はスケールが大きい案件を扱い、幅広い知識と視野を得られる、やりがいに富んだ仕事になると思います。
近年は民間企業と採用競争が進み、各自治体は採用に力を入れて、インターンシップで就業体験や見学会なども行なっていますので、進路として考えている学生は早めに業界研究を開始していくとよいでしょう。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)