【就活情報】進学と就職で迷ったときに、再確認すべき「大学院進学のメリット」と決め手となる将来像について

11月下旬になると、必ず事務局に来る質問は「学部卒で就職すべきか、大学院に進学すべきか迷う」というものです。読者の中には、「そんなの悩むはずない。最初から決めているから」といわれる人も多いことでしょう。

確かに国立大学の建築、土木では、学部の8割から6割程度が毎年大学院に進学する状況があり、「進学する・就職する」のどちらにも明確な理由や学生自身の強固な意志が感じられるものです。

筆者の友人も国立大学の土木学科に進学して、学友の大半が公務員やインフラ企業の研究職を目指して大学院進学していく中で、学部卒で中堅ゼネコンに施工管理職で就職しました。彼は入学前から一貫して、現場で「ものつくりに携わりたい」という志向でした。「現場を見たい」という理由で、大学1年生の時から、土木現場でアルバイトをしていたくらいです。また卒業まで地元で過ごしたので、就職を機に全国・海外で仕事をしたいと思っていたようです。

3年生の冬に「初めて考える」大学院進学

今回、相談があったK君は、地方私立大学建築学科の3年生です。通学する大学では大学院進学が学部生の1割に満たず、希少といってよいでしょう。K君も最近まで、進学はまったく考えていませんでしたが、建設会社のサマーインターンシップで5日間の就業体験をして、就職や将来の仕事について具体的に考える機会を得ました。

また夏休み後にゼミ配属されてから、教授や同ゼミの友人、先輩たちと直接話す機会が多くなり、周囲の学生が、自分よりもしっかりとした将来ビジョンを持っていることを知りました。何より、今夏の就業体験を通じて、興味をもった研究開発職や設計職に就くのは、どうやら学部卒からの就職では難しいようだとの現実に向き合うようになりました。

ここまで話を聞いて、「つまりK君は、いまは大学院に進学したいと思っているのでしょ?」と聞くと、「いや、たぶん気持ちはあるんですけど、インターンシップに参加した企業からは、早期選考の話が来ていて、せっかく頂いたお話なので受けた方が良いのかという思いもあるのと、大学院進学の話は、まだ一度も両親に話したことがなくて、就活に行っていることも知っているから、今さらどう切り出したらよいのか悩んでしまったんです」ということでした。

ここから先は、K君自身の問題として、自分で方針を決めて解決をしていくしかありませんが、取り急ぎ「志望動機をまとめることと、両親の説得方法」については助言をしました。早期選考への応募も、合格するかわからないし、経験してみればよいと思います。

本記事はそこでK君に話したことを中心に構成をしています。

将来目指したいのは「どの位置でする」仕事なのか?

建設の仕事は川上から川下まで様々なポジションがあります。具体的には「技術研究・技術開発」、「調査・企画・計画」、「設計」、「施工」、「運営・維持管理」といった順番でプロセスに応じた職種が配置されています。

総合職として入社した場合に、多様な職種を経験しながら、適性を見極めていくキャリアパスを持つ企業もありますが、建設系の職務はそれぞれの専門性が高いために、職種別採用をしている企業が多いのです。

例えば大半のゼネコンは、施工管理で入社をすれば、現場経験を積んで資格を取り、建設部で昇進していくことになるから、途中から設計職や研究開発職に異動することはほとんどありません。(逆に研究開発職で採用された社員が、初期研修で施工現場に勤務することはあり得ますけれども。)

そこで、自分が「将来、どのポジションで何をやりたいのか」構想して就活を進めていく必要があるわけです。

参考:「[建設業の基礎知識]2024【2】職種・業種編」でも職種について取り上げていますのでご覧ください。

エンジニア(工学技術者)の仕事とは?

建設系には、現業職(技能職)もいれば、技術職(施工管理・設計職など)もいます。技術職の中でも、専門知識や専門技術を有したエンジニアといった職能もあります。エンジニアとは、どのような仕事になるのでしょうか。まとめたものが下図になります。

エンジニアは自ら開発していく役割を担う職能になるため、現役の間は、ずっと業界の最新情報や技術進歩を追い続けて勉強していく必要があります。そのため大学院に進んで研究を修めた人材が求められていますし、高度な研究開発を担う人材は、入社後に大学院に戻って博士後期課程で研究を継続することもあります。

上図を見て「自分もエンジニアとして活躍したい」と思えば、大学院進学は考えた方がよいと助言をしています。

大学院進学のメリット(給与以外)

専門研究を修めることができて、その研究成果を論文発表できることが第一のメリットですが、成果をもとにエンジニアを目指す道が開けること、学部卒より給与が高く、昇進昇格も早くなることがメリットといえるでしょう。

現在は民間企業への就活が早期化しているため、大学3年次の本格的な選考開始時期が来る前に方向性を決めることが必要です。

一旦、就活を進めながら方向性を考えることは全然問題はなくて、むしろ望ましいのではないかと思います。「動かないと考えられないのが人間だから」

大学院進学のメリット(給与面)

大学院進学には最低でも2年間の学費が必要になります。研究費も必要ですし、生活費も自己負担となる人が多いでしょう。現実的な金銭問題は奨学金や両親の援助が必要になります。アルバイトは可能ですが、研究はかなり忙しく、多くは望めないと思われます。

進学に費用が必要な分、大学院卒は初任給が高く、昇進昇格も早くなるので、生涯賃金では一般的に学部卒より4000万以上の差がつくと言われています。

下図は「令和5年賃金構造基本調査」から集計した学歴別の初任給比較です。

上図の大卒、大学院卒の給与をもとに初年度年収対比をしたのが下図です。

「賃金構造基本調査」は全産業を対象としていますが、大手ゼネコンなどは令和6年に初任給が大幅増額しており、また技術系職員には諸手当が支給されることも多く、より金額が高くなる傾向があります。但し、「令和6年賃金構造基本調査」は集計中で、11月現在では未だ発表されていません。

皆さんは、実際の志望業界・企業で初任給を調べてみるとよいでしょう。

大学院進学の可能性は、現在の大学だけではありません

学生時代はとかく周囲しか目に入らないものです。就職を意識してから「大学院で何を研究するのか」、「その研究によって、将来、どういった仕事をするのか」を熟慮して、学部通学している大学から、外部の大学院へ進学する方法もあります。

大学院は外部に門戸を開いているので、意中の大学、研究室を訪問して受験することで入学していくことが可能です。地方私大や女子大などで、大学院進学が希少な大学から国公立大などの大学院に進学していく学生は結構いるものです。

「周りに進学する友人がいない」ことで諦めることではないと思います。

卒業研究指導教員に相談して、紹介を得ることなども一般的ですので、検討していくべきかと思います。

まとめ

本記事では大学院進学を推奨するような内容となっていますが、早く社会に出て働きたいと考えている学生の方が多いのが現実ですし、費用負担も学部以上に必要になってきますので、環境が許さない場合も多いと思います。ですから大学院に進学できるとしたら、それは大変恵まれたことなのではないかと思います。

それだけに進学するならば、しっかり研究をして、将来の仕事に活かしてほしいと思いますし、決断されたことを応援したいと思います。

また学部卒でも、「入社する」という観点から、「自分でキャリアを開いていく」観点で、就職に対するのがよいと思っています。大学の先生方や建築家なども、様々な就業体験を通して、現在の仕事に就いているわけですから、これからの時期、多くの体験談を聞くことができるのではないかと思います。

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)