特集【3】タワークレーン遠隔システムが建設を変える! 鹿島と竹中工務店ほか4社が共同開発したTawaRemo(タワリモ)【建設DX】

建設DX特集第3回目は、タワークレーン遠隔操作システムの導入事例を紹介します。

高層ビル建築に欠かせないタワークレーン。その操作は過酷な仕事です。

オペレーターは作業時に、タワークレーン頂部の運転席まで約50mの距離をはしごで上る必要があります。それだけでも体力的にきついですが、一度運転席に座れば、作業終了までずっと高所にとどまる必要があり、まさに孤独との闘いです。食事やトイレも不自由な環境で働き続けなければならず、風や振動でクレーンが揺れることもありますので、常に事故を起こさないように張り詰めた緊張感と高所作業の恐怖により、心身の負担は相当に大きいのです。

そのため、大型タワークレーンを利用する際には、事前に現地を管轄する労働基準局に届出をして検査を受けなければなりません。

建設業全体が深刻な人手不足の状況にありますが、タワークレーンのオペレーターも担い手確保が喫緊の課題といってよいでしょう。高所作業の負担やリスクを軽減することや、若手オペレーターを育成していく必要性が高くなっています。

鹿島と竹中工務店がアクティオ、カナモトと共同開発した「TawaRemo(タワリモ)」

2020年6月16日、鹿島と竹中工務店は、建設機械レンタルのアクティオ、建機や情報機器をレンタルするカナモトと共同で、タワークレーンの遠隔操作システム「TawaRemo(タワリモ)」を開発、発表しました。

TawaRemoは、タワークレーンの運転席での操作と同じ環境を地上に再現できるシステムです。開発時のテストでは、大阪に設置した専用コクピットから、名古屋に設置された大型タワークレーンを操作して、建材の移動や積み込み、積み下ろし作業をリモート制御するのに成功しました。

TawaRemoの専用コクピットには、タワークレーンの運転席周りに設置したカメラで撮影した映像が通信基地局経由でモニターに投影され、タワークレーンに付けたジャイロセンサーが計測した振動や揺れを、コクピットで体感できるようになっています。

通信システムはカナモトが開発した「KCL(Kanamoto Creative Line)」を使い、NTTドコモが提供する通信回線「アクセスプレミアム」を利用することでセキュリティーを確保し、低遅延での遠隔操作を可能としています。

出典:2020年6月16日、鹿島建設株式会社・株式会社竹中工務店プレスリリース

2021年4月、「TawaRemo(タワリモ)」が建設現場に初導入

2021年4月初旬、東京都千代田区で再開発が進む「九段南1丁目プロジェクト(仮称・当時)」の建設現場にTawaRemoが初導入されました。

再開発で建設される新築棟は、地下3階、地上17階建てで高さが約84m。タワークレーンは新築棟の躯体上部に設置され、隣接する保存棟の屋上に設置された遠隔操作室「TawaRemo操作ハウス」にある簡易コクピットからオペレーターがリモート操作しました。

従来は高所に設置した、タワークレーンの運転席で操作をすることが当たり前だった作業は、安心、安全な環境で遠隔操作が可能となりました。

鹿島と竹中工務店に加えて清水建設もTawaRemoに参入。3社連合で検証へ

TawaRemoのシステムや専用コクピットは、試験運用からさまざまな改良を行い、初導入から本格運用に向けて、搭載建機や専用コクピットを増産していくことになりました。

今後、鹿島と竹中工務店は清水建設も加えた3社連合でTawaRemoの実現場での検証を進めていく計画としており、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として実用化されたこのシステムは、短期間で普及していくことになり、新たな標準となっていくことでしょう。

何よりもTawaRemoの普及により、高所作業の負担やリスクがなくなり、経験が浅いオペレーターも地上で十分なトレーニングを受けていくことができます。これからは男女問わず、若手オペレーターの育成、登用に寄与していくことでしょう。

(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました。)