
空調衛生設備系サブコンの基礎知識(売上高ランキング)
昨年9月に掲載した「[専門工事会社]の基礎知識2024」では、専門工事業全般を取り上げました。
本記事では、建築系大学の環境設備研究室の学生が進路とすることが多い、空気調和衛生設備系の大手サブコンについてご紹介します。
空調衛生設備系サブコンとは?
空調衛生設備系サブコンは、主に空調設備工事や衛生設備工事、消防設備工事を担う専門工事業者を総称する用語となっています。現代の建築では、省エネ、ZEB・ZEHなど優れた環境性能を有することが条件となっていて、設備機器の研究開発や施工能力をもつ大手専門工事業者は、下請け受注だけではなく、新築・改修問わず分離発注が増えており、直請けの工事も多くなっています。
■空調設備工事とは?
空調設備工事は、建物内の空気や湿度などに関する工事全般を意味します。たとえば、次のような項目は空調設備工事に該当します。
1.空調、換気設備の配置
2.空調・換気に対するダクトや設備の計画、設置
3.火災対策のための排煙設備の計画・設置
■衛生設備工事とは?
衛生設備工事は、建物内で使用する上下水道に関する工事を意味します。たとえば、次のような項目は衛生設備工事に該当します。
1.内外の給排水の配管工事
2.給排水設備の計画・設置(衛生器具やガスも含む)
3.各部屋における配管のルート設計
■消防設備工事とは?
消防設備工事は、火災に備えるための工事全般を意味します。たとえば、次のような項目は消防設備工事に該当します。
1.火災報知器の配置計画、設置
2.消火栓の設置
3.避難はしごや救助袋の設置
空調衛生設備系工事の市場規模は?
2024年の建設投資額は74兆3,500億となっていますが、そのうち、1兆1,400億円を空調衛生設備工事が占めている状況です。
2024年のゼネコン売り上げは、約17兆9000億円です。空調衛生設備工事の売上割合を対比すると6.3%です。建築工事の中でも空調衛生設備工事は必要不可欠であり、安定した売上基盤をもつとよく言われています。
空調衛生設備系サブコン売上高ランキング
下表は、空調衛生設備系サブコン大手8社を売上高順ランキングとしたものです。
売上高は連結決算数値ではなく、単体としての数値になりますのでご注意ください。
空調衛生設備系サブコン大手8社の特徴をご紹介します。
1.高砂熱学工業
高砂熱学工業株式会社は、日本を代表する空調設備工事会社で、空調技術を中心とした建築設備の設計、施工、保守などを手掛けています。さらに最近は環境制御システムや宇宙開発事業など、事業の多角化にも力を入れています。
創業は1923年で、現在は東京都新宿区に本社を構えています
施工事例は、東急歌舞伎町タワーや神奈川大学みなとみらいキャンパスなどがあります。
2.三機工業
三機工業株式会社は、三井グループの総合設備建設会社で、1925年に設立されました。空調設備、給排水設備、電気設備、さらには環境システム事業など、多岐にわたる技術を活かし社会に貢献しています。企業の目標として「快適な環境を提供する」を掲げており、最新技術や省エネシステムなどにも注力しています
施工事例としては、愛宕グリーンヒルズMORIタワーなどが代表的です。
3.ダイダン
ダイダン株式会社は、管工事及び電気設備工事業を行う会社で、旧社名「大阪電気暖房」の略称「大暖」が現社名「ダイダン」の由来となります。施工事例としては、トヨタ記念病院や長崎大学高度感染症研究センター実験棟などが代表的です。
4.大気社
株式会社大気社は、日本の設備工事会社。空調、塗装、衛生設備の設計・監理・施工を行い、自動車塗装設備は国内首位、世界で2位です。研究施設や病院なども施工しており、施工事例には大原薬品工業 鳥居野工場や東芝セミコンダクター(タイランド)新工場などがあります。
5.新日本空調
新日本空調株式会社は、創業から95年の歴史がある空調設備工事をメインに施工している企業です。施工実績は、JICA市ヶ谷ビルやFUJIFILM Creative Villageなどがあります。
6.朝日工業社
株式会社朝日工業社は、 東京都 港区 浜松町に本社を置く日本の建設業者で、 主に空調設備や給排水・配管設備、クリーンルームなどの設備工事を手がけています。施工事例は、札幌ドームや熊本城天守閣(復旧整備)などが代表的です。
7.日比谷総合設備
日比谷総合設備株式会社は、空調・衛生・電気・情報通信の4つの設備事業をメインに展開している総合設備会社です。NTTグループからの元請案件を多数手掛けており、安定的な業績を維持しています。
施工事例は、住友不動産東京三田ガーデンタワーや阪急西宮ガーデンズなどがあります。
8.テクノ菱和
株式会社テクノ菱和は、空調・衛生設備の設計、施工管理、保守メンテナンスなどを手掛けるトータルエンジニアリング企業です。国内外で54の拠点がある点も特徴です。施工事例は、豊島区立池袋第一小学校や佐藤薬品工業株式会社 製剤A棟などがあります。
下表はご紹介した、空調衛生設備系サブコン大手8社をまとめたものです。
今後の市場規模予測
近年、地球温暖化やエネルギー問題を背景に、省エネルギー化が叫ばれています。特に建物のエネルギー消費量のうち約40%を占める空調設備に対し、省エネルギー化が求められています。そこで各企業は省エネルギー化に合った製品開発を進め、市場競争が激化しています。今後の市場規模は、正確な予測は難しい状況にありますが、技術の進歩や省エネルギー化への意識の高まりにより、空調設備業界は今後も成長が見込まれます。特に、新興国の経済発展により、需要拡大が期待されています。また、日本国内では老朽化した建物の改修や災害時の復旧需要、そして省エネルギー化政策の推進に伴い、市場規模が拡大することが予想されます。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)