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【就活情報】ぼくたちの給与はなぜ上がったのか?大手ゼネコン初任給「院卒30万円台」に突入!5社が横並びで長谷工はさらに上をいく!
2024年度入社の大手ゼネコン初任給は大卒28万・院卒30万へ!
大林組、鹿島建設、大成建設、竹中工務店の大手ゼネコン4社は、2024年2月中旬までに、24年4月に入社する大卒・院卒の初任給引き上げを決定しました。
この時点では検討中としていた清水建設も、3月29日に初任給引き上げを公表して、5社ともに初任給は、大卒28万円・院卒30万円となりました。
建設業界では慢性的な人手不足に加え、時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」が目前に迫っており、若く優秀な人材の確保が喫緊の課題になっていましたが、初任給の引き上げは3年連続となりました。下図は2021年度以降の「大学院卒初任給推移」となります。
大手ゼネコン以外では長谷工コーポレーションが2024年2月19日、2024年4月に入社する大卒・院卒の初任給を、前年入社に比べて4万5000円引き上げると発表しました。大卒30万円・院卒32万円となり、大手ゼネコンを上回る金額になりました。
本記事では、本年度、建設大手がこのように初任給を大幅に上げてきた背景と、2025年度以降も上がり続けていくのか? 現時点のまとめをしてみたいと思います。
政府が業界に要求した水準は「5%を上回る賃上げ」だった
2024年3月、政府は建設業界に対して「5%を上回る賃上げ」の協力を求めました。あくまでも協力要請ではありますが、これにより業界全体として賃上げが進むことが期待されるようになりました。
建設業の賃上げに向け、2024年3月から「労務費の引き上げ」も行われています。これにより、公共事業の労務単価が「前年比5.9%引き上げ」となりました。労務単価は12年連続で上昇しており、過去最高金額となっています。
政府広報オンライン:建設業団体との賃上げ等に関する意見交換会-2024.03.08
日本では過去30年に渡り、デフレ(物価が下がる現象)の状況が続いてきました。コストカットや人件費削減が優先されてきた結果、未来への成長が妨げられてきたのです。
しかし本来であれば、「物価上昇→賃金上昇→購買力上昇」という好循環が自然と起こるのが理想的です。岸田政権では賃金と成長の好循環を促すため、投資や賃金上昇に取り組んでいます。各社が協力することで、物価高に負けない賃上げが期待されています。
出所:首相官邸 「物価高を上回る所得増へ」2024.02.06
建設業の賃上げは慢性的な人手不足と2024年問題が背景にあった
大企業で大幅な賃上げが行われるのは「優秀な学生獲得のための手段」としての狙いもあります。最近では人手不足が深刻化しており、他社に劣る賃金では採用が厳しくなっている現状があるのです。
また、建設業では2024年度から「働き方改革関連法」が施行されました。これによりワークライフバランスの実現や労働環境改善など、幅広い分野が影響を受けると言われていますが、最も大きな変更点は、時間外労働の上限が「月45時間・年360時間」になったことが挙げられます。特別な事情がある場合でも、「年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間」が限度となるのです。
これにより適切な労働環境が整うことが期待されます。しかし一方で「残業代が稼げなくなるのでは?」という不安な声も上がっています。このことが賃上げに結びついたのです。
もう一つは、国の後押しとして、国土交通省の発注工事において、総合評価落札方式の入札で2022年4月に導入した「賃上げ表明企業への加点制度」があり、2023年度は12月末時点で加点を受けた競争参加者が7割以上に拡大していることがありました。つまり事前に賃上げを決定して入札に臨んでいたわけですね。
建設業における賃上げの課題や問題点
初任給の引き上げは採用に直結する対策ですが、残業が無くなっても給与が大幅に減ることが無いように、企業側には適切なベースアップが求められています。
大手ゼネコン5社のベースアップは下図の通りでした。
大成建設や竹中工務店のように、現場勤務者への手当増額を実施した企業もあり、今後トレンドになっていく可能性があります。
2024年3月からは、公共事業の労務単価が「前年比5.9%引き上げ」となりましたが、公共工事だけでなく、民間による工事の賃上げも行われる必要があります。そのため今後は「標準労務費」を国が示し、水準を大きく下回る金額での契約は禁止とする仕組みが設けられる予定です。
また、建設業では「多重下請け構造」が長年の課題となっています。これは「元請→1次下請→2次下請…」といったように、委託が多層的に発生する仕組みのことを指します。これにより役割や責任の所在が不明確になったり、コストが複雑化したりするのがデメリットです。また中間企業に利益が流れることで、下位請負への対価が減少することも大きな課題となっています。
大手ゼネコンでは6%の賃上げが行われる一方で、実際に工事を行う下位請負業者に同様の賃上げが行われることは保証されていません。適切な価格転嫁が行われるように、モラルを持った契約が求められています。
2025年度入社も初任給は上がっていくのか?
2024年10月から、最低時給が全国平均1055円となり、2023年度の1,004円から51円プラスと過去最大の引き上げ額となりました。初任給や賃金引き上げは、今後も建設業だけではなく、すべての産業に継続対応が不可欠な問題になると思われます。
建設業全体では「働き方改革」への取り組みも未だ進行形であり、現状では2024年度のような大幅な初任給引き上げはないと思われます。
10月27日に衆議院選挙を終えたばかりですが、今後の国策の方向性や、各社の状況を加味して、給与や諸手当の増額を検討していくことになると思います。それだけに、若い世代も政治・経済の動向に目が離せない時代を迎えたといえるでしょう。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)