カテゴリ
フリーワード
☆設計コンペ取材記事☆ 「五三会建築設計競技」の魅力
≫第51回五三会建築設計競技「新たな境界をまとう家」 詳細ページはこちらから≪
広島工業大学の沿革と「五三会」の歴史
広島工業大学は1961年創立、1963年大学設置の歴史ある大学です。メインキャンパスは広島県広島市佐伯区に位置し、3学部11学科と1研究科を有し、約4千人の学生が学んでいます。
以下、五三会会長 尾立道泰氏による「五三会の生い立ち」から引用します。
「1965年、広島工業大学に建築学科が開設され、1969年3月に第一回卒業生が巣立っていった。そして、第五回生が建築業界に出た1973年 ( 昭和48 年 ) の初夏、広島工業大学建築学科同窓会結成の気運が高まってきた。
ときに、1973年 ( 昭和 48 年 ) 6月 24 日、建築学科菅原研究室に建築学科同窓会の準備委員会の初会合をもつ。
・組織 ( 同窓会 ) の目的の確保、同窓生相互の情報交換、技術交流共助、在学生
( 建築学科 ) との交流援助、地・域社会の建築文化への貢献等々。
・会則 条案の作成
・役員構成組織の運用
そして、第2回準備委員会を同年7月15 日に、8月3日第3回準備委員会をもって準備委員会は解散し、正式に広島工業大学建築学科同窓会「五三会」が誕生した。準備委員会は、そのまま役員会へと切り替えられた。
「五三会」(いつみかい)命名の由来は、我々は旧 「五」日市町「三」宅の地で学び、また建築学科の学生番号の「5」であり、その建築学科の同胞の集団であることから採択されたものである。また、「五」や「三」は古来から吉とされていた数でもあり、五三会の将来が輝かしく発展していくことを願うものである。」
五三会は日本建築学会中国支部「2023年度中国建築文化賞(人物・団体部門)」を受賞しました。
中国建築文化賞(人物・団体部門)は、「中国地方の建築文化の発展に顕著な貢献が認められる活動」であり、「広く地域文化の発展と建築文化に対する意識の高揚を図る」ことに寄与した活動、団体に贈られる賞です。
五三会が50年に渡り「五三会建築設計競技」を開催してきたことが認められた受賞ですが、本設計競技は全国でも学生コンペの先駆けとなるもので、また全国的にも珍しい大学同窓会が主催するコンペとして認知されてきました。
コンペ入賞者からは、多くの建築家を輩出してきました。また第5回の審査員に藤本昌也氏、第10回には伊東豊雄氏、第15回には古谷誠章氏を迎えるなど、著名な建築家の方々もご協力いただいています。
コロナ禍で学生コンペの中止が相次ぐ中でも、オンラインを活用して継続して開催し、全国から学生が応募するコンペに成長しました。
つまり本設計競技は、同窓会が後輩の指導育成を目的として、広島工業大学の学生に限らず、全国・地方に広く門戸を開き、他大学の学生と切磋琢磨して、競い合うことで、後輩たちがより成長することを願い、毎年開催されてきた設計コンペなのです。
第51回五三会建築設計競技の概要・テーマ
第51回目を迎えた今大会は、課題・テーマ・概要が下記の通り発表されました。
■課題 「新たな境界をまとう家」
■テーマ
概要は次の通りです。
■日程
2024年11月23日(土・祝)13:30~ / 表彰式16:00~
■会場
オルタナティブスペース・コア 広島市中区基町19-2-448基町ショッピングセンター内
■応募資格
近年競技は全国を対象としていましたが、本年度は中国地方5県(広島県、岡山県、山口県、鳥取県、島根県)において建築を学ぶすべての学生。個人、グループどちらも応募可。としています。
グループの場合は、全員が応募資格を満たす必要があります。
■審査方法
1次審査通過者の中から、公開審査会上でのプレゼンテーション、質疑応答を経て入賞者を決定します。
■入賞賞金
総額30万(※入賞数、賞金額他は、当日、審査員に一任とされています)
■審査員およびプロフィール
今大会は、いずれも広島で設計事務所を主宰する、現役プロフェッサーアーキテクト3名が審査員として選ばれました。
■応募総数・一次審査結果
●応募総数は全体で41作品。応募大学内訳は下記の通りとなりました。
・岡山県8作品(岡山大2、岡山県立大6)
・広島県29作品(近畿大工学部8、広島工大18、広島大2、呉高専1)
・山口県2作品(山口大2)
・島根県1作品(島根大1)
・地域外1作品 ※応募資格対象外のエリアからの応募のため、2次審査選考対象外としています。
●一次審査結果
下記10作品が選出され、公開審査に進みました。
公開審査会レポート/ハイレベルなプレゼンと質疑応答が繰り広げられた
審査会に先んじて、11月10日に一次選出結果が発表され、選出された10名は各自が設計案のブラッシュアップと模型製作を行ない、審査会場に集合しました。
会場のオルタナティブスペース・コアは、2013年度「DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選出された有名近代住宅「広島市営基町高層アパート」に併設する、基町ショッピングセンター内に設置されるギャラリースペースです。五三会建築設計競技では今大会初の会場使用となりました。
各出展者は選出後約2週間で、与えられた時間いっぱいを使って、十分なプレゼン準備がされており、例年以上にハイレベルな発表と質疑応答が繰り広げられました。
タイトな会場には、指導教員や学友が応援に駆け付けるなど、次第にプレゼンの熱気が伝わり白熱した議論が展開されていきました。
プレゼンテーション+質疑応答の後、最優秀賞、優秀賞、審査員特別賞を決定すべく審査員による公開投票が行われました。
見事、最優秀賞に選ばれたのは、近畿大学工学部大学院1年生の田中万尋さん、3年生の小西愛悠さん、斎藤啓夢さんのグループによる「時のかけらを積み重ねる家」となりました。
本作品は『三角地を活かすように4mスパンでH形鋼を配置した構造体を「骨格」として、住まう人の「小さな時間」が、住人が変わる度に住まい方は変わっても、「時のかけら」として積み重なっていく。「時間の境界」をまとう家という、素敵なストーリーを描いた作品』です。
■受賞作品紹介
最優秀賞、優秀賞2点と審査員特別賞に選ばれた作品を紹介します。
(画像クリックで作品プレゼンボードにリンクしています)
■総評(要約)
中薗哲也氏
今回テーマ「境界」は、自分自身でも新しい提案をしようとか、何か問題解決をしようとか、いつも思う難しいテーマですが、出展作品は実務レベルでも参考になるアイデアがたくさんありまして、本当に感心しました。プレゼンボードや模型もすごくレベルが高くて、最近は「働き方改革」であまり働いてはいけないはずだけれどと、心配になるくらいに、とにかく詰め込んだ設計内容に感心しました。
一方で、最近は模型がジオラマみたいです。1/1を作りたい気持ちがそうさせると思いますが、設計ではスケールを重視してモデル化することが非常に重要で、1/100、1/200、1/300等で模型を作ることで、目に見えていない建築が、もっと見えてくるはずです。周辺環境なども改めて見直してほしいと思いました。
■筆者所感
筆者は五三会建築設計競技を10数年に渡り、現地取材してまいりました。第50回の節目で、五三会が中国建築賞文化賞を受賞し、第51回の本年度は原点回帰を目指した開催でしたが、例年、参加が多い広島だけではなく、岡山、山口、島根各県から応募があった40余点から審査会へ選出された10作品は、十分に案が練り上げられた力作揃いで、特に三賞は僅差の競い合いであったと感じました。
広島県は多くの有名建築家を生んだ土壌であり、五三会建築設計競技は広島県出身建築家や建築系教員の多くが学生時代に挑んできた大会です。
本年も公開審査会に臨んだ学生達からは「未来の建築家」の姿が垣間見えました。盛況となった大会を支えた、五三会の皆様や、厳正かつ熱く指導を頂きました審査員の皆様に、総合資格ナビからも感謝申し上げます。
(記事構成:総合資格naviライター kouju64)
(取材・写真撮影:ARCS Field 水野高寿)