【建設業の基礎知識】2025【2】戦慄?建設資材・労務単価高騰の実際

物価と円安が織りなす大きな影響。もう聞きたくない!それでも知るべき現実

いつの頃からか、毎日のように物価上昇が話題となり、政治や経済に関心を持っている若者が増えているそうです。一方で賃金上昇は最低時給の引き上げや給与改定などが実際に行われていますが、どこか曖昧な醒めた気持ちを引きずったまま暮らしている人が増えているように感じます。

だって、わからないよね?先のことなんて。給与上がるみたいだけど、社会保険とか税金は上がるらしいじゃない?手取りを上げるお話もうまく行ってないみたいじゃない?

もう聞きたくない!そんな気持ちはよくわかります。でもここで踏みとどまろう!それから一歩先に踏み出そう!なぜか?それは建設業がモノをつくる産業だからです。モノをつくるのには材料が欠かせない!それから、たくさん人の手が必要だ!どちらもすごくお金が掛かるぞ。大変だ!

しかし建設業はつくることによって、お金をいただける産業なのです。

ですから建設に携わる人や建設を志す人は、運命的にいくら掛かるのかを知らなければ話にならないのです。本記事では、建設業における資材高騰の現実と、労務単価上昇の実際について解説します。

日建連による「資材高騰・労務費上昇対策は急務」の発信

2025年1月29日、一般社団法人日本建設業連合会は「建設工事を発注する民間事業者・施主の皆様に対するお願い」という発信をしました。これは2024年6月の建設業法等の一部改正法成立を受けて、「持続可能な建設業になるためにも、必要な担い手の確保に向け、資材価格の高騰や労務費上昇の価格転嫁の対策などを強化していくことが急務」であると、建設事業者に理解と協力を求めたものです。

この中で、資材高騰・労務費単価上昇に関する現状の提示がありました。

参照:一般社団法人日本建設業連合会(「 」内は引用)

建設資材高騰の現状(2025年1月版)

世界的な原材料および原油等エネルギーの品不足や価格高騰・円安の影響を受けて、建設工事の資材価格なども高騰しています。下図は2021年1月から2024年12月の建設資材物価指数(東京)の推移です。

出所:一般社団法人日本建設連合会

建設資材物価は、2021年1月と比較して、土木部門(平均)で35%上昇、建築部門(平均)で32%上昇、建設全体(平均)で33%の上昇です。

建設工事においては、資材費の割合を50%から60%と仮定すると、資材高騰の影響による全建設コスト(平均)は、16%から20%上昇となります。

建設資材高騰については、ウッドショック・アイアンショックというように、木材や鉄鋼材の物価上昇がよく知られていますが、それだけではなく、ステンレスやアルミ、板ガラスやコンクリートなど、あらゆる建設資材の物価が上昇しています。

下図は日建連が作成したパンフレットに記載された、各建設資材の価格高騰の現状を示した一覧表となっています。

出所:一般社団法人日本建設連合会

労務費の上昇等の現状(2025年1月版)

政府の賃上げ方針や労務単価の引き上げを受けて、建設現場で働く建設技能労働者の賃金も上昇しています。

建設技能者の賃金相当として積算される「公共工事設計労務単価」という指標単価があり、毎年、政府において決定されていますが、2020年度に比べて、現在16%引き上げられています。

国土交通大臣と建設関係4団体は、2021年度から毎年、賃金上昇の申し合わせを行っていますが、2024年度は前年度比5%を十分に上回ることが目標とされました。

下図に公共工事設計労務単価(平均)の引上率が記載されていますが、労務費割合を30%と仮定すると、労務費上昇の影響により、全建設コストは4.8%上昇することになります。

出所:一般社団法人日本建設連合会

下図は日建連が作成したパンフレットに記載された、建設技能者の労務単価の上昇の現状を示した一覧表となっています。

出所:一般社団法人日本建設連合会

全建設コスト上昇は2割をはるかに超えている

建設工事における、建設資材(材料)費の割合を50%から60%、労務費率30%と仮定すると、この47カ月で、建設資材の高騰・労務費の上昇の影響により、仮設費や経費などを含めた全建設コスト(平均)は、21%から24%上昇すると算定されます。

(土木分野では22%から26%上昇、建築分野では21%から24%上昇となります。)

例えば、100億円の建設工事では、2021年には「労務費+原材料費」で80億円から90億円であったものが、2024年度には101億円から114億円に上昇するということですので、建設工事費の見積もりを見直して、125億円程度にはしないと利益が確保できないことになります。

資材価格高騰や労務費上昇以外にも、設備関連や一部建設資材の納期が遅延していること、配送費の上昇など様々な要因が工期に影響を与えています。

建設人としての情報と見識は得る必要があるか?

建設系の学生は、実践的なことは業界にでてから経験と学びを繰り返していくことで自ずと身についてくるものだと思います。ですが学生時代も設計や研究に打ち込む毎日がありますし、進路に向けて業界研究も不可欠なもの。

まちにでて建築や土木構造物を見る際には、「どうやってつくる?どれくらいでつくれる?幾らくらいかかる?どれくらいもつ?どうやって壊れる?」というような発想や感性は必要なのではないかと感じます。そして自分からうまく回答が出てこないような時は、「実際につくっているプロの設計者や施工者はわかっているのだな。職人もきっと知っているかも」という疑問は感じるべきことなのです。

わが国は防災やインフラ再整備など、ますます建設の重要度が増していく、転換期を迎えています。復興に多大な時間が掛かっていること、万博もリニア中央新幹線も工事が大幅に遅れていること。テレビやネットニュースの報道では、建設業で働く人々の実態まではなかなか見えてこないこと。

総合資格ナビでは、建設系の最新情報や重要政策などは、できるだけお届けしていきたいと思っています。

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)