【建設学生団体・紹介】景観開花。実行委員会(東北大学)

2004年から連続開催の「景観開花。」は、国内唯一の学生向け土木デザインコンペ!主催団体は東北大学 景観開花。実行委員会!

土木デザインコンペは国内にいくつか存在はするものの、実施評価コンペや単独コンペ、実施を前提としたコンペなどがほとんど。まず土木分野で定期的に実施されているアイデアコンペ形式の土木設計競技は大変珍しい存在です。

これに加えて、「主に学生を対象としている」「学生団体が主催して運営している」となるとほかには例がない!その唯一の設計競技こそが、「土木デザイン設計競技 景観開花。」です!

2004年初回開催以来、昨年12月に開催された「景観開花。2024」まで、全20回に渡る景観開花。を主催し運営してきたのは、東北大学 工学部 建築・社会環境工学科   景観研究室(研究指導教員:平野勝也 准教授)の学生たちが結成する、景観開花。実行委員会です!

土木デザインって何?建築人でもわかる解説など

景観(ランドスケープ)、都市・まち(アーバン・コミュニティ)。これらは建築系大学の研究室でも取り組みがあります。建築と土木が入り組んだ領域ともいえますが、景観開花。がテーマとする土木デザインとは、土木構造物や公共空間のデザイン、計画、設計、制度の活用などに関する取り組みを包括したものです。土木デザインはエンジニアリング的な視点に加え、デザイン的な視点も取り入れ、周辺環境や地域との調和を重視したまちづくりを目的としています。

景観開花。の設計競技では最終的には構造物(ストラクチャー)を評価することになります。代表的な土木構造物には、道路や鉄道、橋、トンネル、ダム、堤防、港湾、水門などが含まれます。

景観開花。実行委員会のすごいところ!アピールポイントやメリットなど

2024年度代表を務める東北大学大学院 工学研究科 土木工学専攻 修士1年 楳田悠太さんに、景観開花。実行委員会の「すごいところ」を3つ挙げていただきました。

・Point1:国内唯一の学生向け土木デザインコンペの運営!

・Point2:コンペの企画から運営までを一貫して経験できる!

・Point3:全国の学生との交流・まちのデザインを学べる!

東北大学 景観研究室は決して人数が多い研究室ではありません。2024年度のメンバー構成を見ても全員で6名!東北大学では4年生から研究室配属になり、景観研究室への新配属は毎年1名から3名といった感じです。少数精鋭になるので、毎年、春に新4年生が配属されると、ミーティングで「今年、景観開花。をやるかどうか?」が議題になるそうです。少人数だから一人当たりの負荷は大きい。本気で準備をしなければ運営は成功しないし、知恵を絞らなければ発展性は期待できない。4年生は卒業研究も大変だけれど両立していかなければならない。そこで「覚悟を問う」展開があるそうです。

結果として、景観研究室で広く深く学びたい気持ちや、希少にして意義深い「景観開花。」を自分たちで成功させる魅力が勝り、実行委員会が立ち上がる。素晴らしい!

景観開花。実行委員会の主な活動

年間通して、計画的に景観開花。の準備を進めていきます。メンバー毎に担当する役割を決めて、重要課題や進捗状況をミーティングで共有し、全員で取り組んでいます。

テーマの作成や、審査委員の選定・依頼、協賛の依頼、Web(公式ホームページ)制作と更新、SNS運営などで開催準備を進め、応募登録を開始すると、応募者対応、審査会設営・運営、審査会配信など、チームとして団結した活動を行います。

実行委員会では例年、M1生が代表に就任して主とした活動を行い、M2生はサポートに回り、4年生は制作やSNS運用などから実践しながら経験を積んでいきます。

■定例会:東北大学 景観研究室で週1回程度のミーティング

■年間スケジュール(2024年度の例)

景観開花。実行委員会の活動紹介

景観開花。2024の準備進行に沿って紹介していきます。

■テーマ作成会議 4月

4月、研究室が新体制となると、景観開花。開催について討議して実施を決めたら、最初に課題となるのはテーマ検討です。テーマ作成会議を行い、課題要素となるキーワードを抽出して意見を交わします。

20回継続してきた景観開花。のテーマは、時代に合わせてトレンドがあります。ここでは各年のテーマをご紹介しましょう。

■テーマの変遷

上表のようにテーマが変遷してきた過程は、第1回から第10回までは、未来へつなぐ新時代の土木デザインの提案を求め、また第11回から第15回までは「まち」に潜む問題の顕在化に対し、人々の生活の接点としての「まち」とそれを支える土木構造物へのあり方についての提案を求めてきました。

2020年度は「土木デザインに関心のある若者へその力を試せる場」、「多くの人々へ向けて土木デザインの可能性を示す」という本イベントの原点に立ち返り、激変する社会情勢に合わせた今後の新たな土木デザインのあり方の提案を新たな形を含めた様式で行う土木設計コンペとしてリニューアルしたという経緯でした。

■Web、SNS準備 5月

景観開花。の情報告知は年度ごとに新設される公式ホームページで行われます。景観開花。を十分に知っていただくため、公式ホームページには今大会の情報に加えて、過去大会のアーカイブも掲載しています。

これに加えて随時の活動紹介や速報はSNSで行います。SNS担当はX(旧Twitter)、Instagram、Facebookを1人で掛け持ち運用していました!

■テーマ決定 5月

4月の打合せからテーマ候補となる多くのキーワードが抽出され、討議の結果、景観開花。2024では「交通結節点」のデザインを主題としたテーマが決定しました。

Oregionalは本コンペに向けて考案した造語です。由来は下記の通りです。(「」内引用)

「さて、選ばれるまちを目指したまちづくりの中で、交通結節点の役割は極めて大きい。交通機関間の乗り継ぎ機能を有する駅前広場やバスターミナルといった交通結節点は、多くのヒトやモノを吸い込み、吐き出す場所である。交通機関の要所として、ヒトやモノが集中することで、まちの拠点となり、顔となる。そして、交通機関やその空間自体で人とまちを繋げることで、まち独自の(original)魅力へと導く玄関口ともなるのだ。つまり、まちの重要地点として、そのポテンシャルを最大限発揮するような空間デザインが交通結節点では求められる。以上のことから、縮退時代を迎えた地方都市(region)を舞台とした、選ばれるまちに求められる交通結節点のデザインをテーマとする。」

引用:景観開花。2024 公式ホームページより

■審査委員の依頼 6月

景観開花。では5名の審査委員に審査依頼をしています。景観開花。2024では交通結節点のデザインというテーマから設計作品実績に着目して審査委員を決定しました。審査委員長は景観開花。初回開催以来、土木設計家の篠原修先生にお願いをしています。

・審査委員長 篠原修(土木設計家・東京大学名誉教授)

・審査委員 泉英明(有限会社ハートビートプラン代表取締役)

・審査委員 乾久美子(建築家・乾久美子建築設計事務所主宰・横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院Y-GSA教授)

・審査委員 神田昌幸(大和ハウス工業株式会社執行役員・大阪府・大阪市特別参与)

・審査委員 西村浩(建築家・クリエイティブディレクター・株式会社ワークビジョン代表取締役)

■応募準備 6月

いよいよ景観開花。2024の主要スケジュールが決定しました。

■応募開始、協賛依頼、ポスター作成 7月

景観開花。2024は7月18日、応募開始となりました。

応募対象は、2024年4月1日現在、大学・大学院・短期大学・高等専門学校・専門学校・高等学校に籍をおく学生、もしくは経験年数5年以下(2024年4月1日現在)の社会人であること。グループでの応募も可としています。

前年出展者や全国の景観研究室に開催案内を行いました。

ポスター作成を行い、告知や協賛依頼を進めていきます。

■応募締め切り 10月

景観開花。2024は10月19日にエントリー締め切り、10月20日に提出締め切りを迎えました。例年よりも応募開始を早くして夏休み前に告知を開始して、応募期間も3カ月を確保したことが奏功して、例年20点ほどであったエントリーが32点に増え、提出は26作品となりました。

■一次審査会・パンフレット作成 11月

2024年11月6日に一次審査が行われました。一次審査は非公開で、応募時に提出された作品データを審査員に郵送して、予め内容を確認いただいた後、オンライン形式で1作品ずつ審査ディスカッションを行い、二次審査に進む入賞5作品を選出いただきました。また特別協賛企業による「特別協賛企業賞」5作品も選出されました。

選出結果をもとに、公開最終審査会で配布される公式パンフレットを制作します。

下図は公開最終審査会告知用ポスターです。

■公開最終審査会・トークセッション

2024年12月1日、東北大学青葉山新キャンパス 災害科学国際研究所で「公開最終審査会&トークセッション」が開催されました。

開会式後、入賞5作品のプレゼンテーションが行われました。

プレゼンテーションが終わると公開審査会討議が行われます。

公開審査会はYouTubeライブ配信しています。撮影、配信も学生委員が行いました。

公開審査会後は、審査委員による「トークセッション」が行われました。

景観開花。2024閉会後は懇親会を開催し交流をはかりました。

【入賞結果】

最優秀賞

No.22

「よりまち 〜”まちに寄る”まちの在り方〜」

細谷雪野,細江真生,小松優馬(名古屋市立大学)

優秀賞

No.26

「垣をほどく」

宮川朗,青木佑太朗,山田蓮人,菱田佑樹,駒月健太(岐阜大学大学院),舩田颯太(岐阜大学)

佳作3点

No.3

「マチアイ 〜まちがゆたかになる交通結節点〜」

新井奏音(法政大学大学院),相澤航平(株式会社日本設計),渡邉真由(株式会社都市環境研究所)

No.14

「芽吹く駅 未来を耕す駅型農業拠点の提案」

安藤大翔,樋口大雅,仲澤和希(日本大学大学院),五十嵐功,酒井優,星野輝太(日本大学)

No.23

「もの、もんどりこ」

中野渡凌,森田葵,山田真子,茅沼耕平,渡由貴(東京大学大学院),浦野昂大,五島瑛平(東京大学)

■作品紹介 よりまち ~“まちに寄る”まちの在り方~

景観開花。2024において、最優秀賞作品となった「よりまち~“まちに寄る”まちの在り方~」を拝見し、筆者の要望により掲載紹介のお願いをいたしましたところ、著作者のご承諾が得られましたので作品紹介をいたします。

注)文面は筆者が作品を読み解き書いたもので、著作者によるものではありません。

「 」内は著作者からの引用です。

「SA・PAの機能をまちに分散させ、直接まちを訪れる。歩きながら自然や暮らしを体感する。車から降りて、寄り道感覚で気軽にまちに寄る。この新しいまちの在り方は選ばれるまちへの第一歩となる。」

敷地は静岡県掛川市倉真。周囲は自然が溢れ、アサギマダラの生息地として知られています。一方で倉真温泉や掛川茶などの特産物があり里山の恩恵を受けている倉真地区。掛川市中心部やICから離れ、外とのつながりが薄い。近年は急速な人口減少と高齢化が進んでいる地域です。付近を通る新東名高速道路には掛川PAがあり、ヒトやモノが集中する交通結節点となっています。現在PAは騒音や景観の観点からまちより距離があり、つながりは薄い。

本提案は、高速道路とまちをつなぐ入口のまち「よりまち」を提案し、高速道路で来た人々はPAの駐車場に車を停めて、徒歩やレンタルサイクルで「よりまち」を経由して倉真のまちを探索する。そこには温泉や宿泊施設や製茶工場の見学、野菜の直売所など自然や暮らしを体感できる多くの場があり、新たな人の流れを起こす。

わかりやすく場をイメージさせるプレゼンシートや精緻な模型など、そのまま情景が浮かんでくるような素晴らしい作品だと感じました。

※その他の入賞結果(特別協賛企業賞)については公式ホームページをご覧ください。

作品パネルデータも掲載されています。

景観開花。実行委員会では、2024大会で応募総数が前年の1.5倍になったことを踏まえて次年度も応募告知を積極的に行っていきたいと思います。公式ホームページには、過年度の大会情報も掲載されています。参考としていただき、ぜひご応募ください。

景観開花。実行委員会メンバー構成(2024年度)

・合計人数:6人(男性:6人、女性:0人)

・学年人数: M2:1人、M1:3人、4年2人

景観開花。実行委員会各種情報

代表(2024年度)

東北大学 大学院 工学研究科 土木工学専攻 修士1年 楳田悠太

代表メールアドレス : umeda.yuta.q2(a)dc.tohoku.ac.jp

迷惑メール防止対策で(a)としています、連絡の際は(a)を@に変えてください。

各種URL

・ホームページ : 公式ホームページ

・X(旧Twitter) : 公式X(@keikankaika)

・Instagram : 公式インスタグラム(keikankaika)

・Facebook : 景観開花。

・YouTube : 景観開花。2024 実行委員会(ライブ)

※本記事に掲載した図版・写真は、景観開花。実行委員会 提供によるものです。

(本記事は、総合資格naviライター kouju64がインタビュー取材を行い、記事構成しました。)