[建設業の基礎知識]2024【1】特徴・需要・課題

建設の役割とは?

建設とは「建築 + 土木」を表す用語です。いずれも日々の生活に不可欠な構造物として、建築では都心の超高層ビルから東京スカイツリーのような巨大建築物、庁舎や駅のような公共建築物に大規模商業施設、マンションや一戸建て住宅まで、規模・用途に関わらず、まちは人の生活を支える多くの建築物で溢れています。

一方、土木ではダムや道路、橋梁、トンネル、鉄道、飛行場といった構造物から、電気・ガス・上下水道・通信などのライフラインまで、社会を根本から支えるインフラを整備、維持する役割を担っています。

建設業は私たちの生活になくてはならない存在で、地域に、人に、安心・安全を確保する産業です。全国にはゼネコン(総合建設業)や設計事務所、ハウスメーカーやデベロッパーなど多くの建設企業があり、また国や市町にはインフラを支える建設行政など、建設業界ではさまざまなプレイヤーが活躍しています。

総務省の2022年度「労働力調査」結果によると、全国の建設業で働く就業者数は479万人で、全就業者数6,723万人の7.1%に当たるとのことです。

建設業の特徴

建設業は一般の製造業と異なる特性があります。それは「一品受注生産」であり、顧客の注文に基づき、異なる土地(建設現場)で一品ごとに生産されることや、「現地屋外生産」として、さまざまな地理的、地形条件のもとで日々刻々と変化する気象条件に対処する必要があること、「労働集約型生産」として、さまざまな材料や資材、機材、さまざまな施工方法により、総合建設業や専門工事業者から、監督者やエンジニア、技能工など多数の労働力を集めて作り出す必要があることなどがあります。

これらの特性により、他の製造業のように「ライン生産方式」や「セル生産方式」、「自動化・ロボット化」などに取り組めないことで、大量生産や効率化がはかりにくい宿命を持つとされてきました。

しかし近年は他の製造業同様に、建設業の担い手不足は深刻な問題となりました。労務環境の改善や若手人材の育成は喫緊の課題となり、国は改善施策を設け、業界をあげて改善に取り組んでいるところです。その内容については後章で解説します。

建設投資は安定推移が続いている

建設業の市場規模を見る際には、毎年、国土交通省が公表している「建設投資見通し」を確認します。

建設投資とは、建物やインフラの建設に対して、年間でどれだけの建設工事が行われるのかを積算して算出された金額で、大きく分けて2つに分類されます。

1.建築投資:住宅やビルなど建物に対する投資

2.土木投資:道路や橋、ダムなどインフラに対する投資

さらに、これらは「政府投資」、「民間投資」に分かれます。政府投資は公共事業として行われ、民間投資は企業や個人によって行われます。

下図は国土交通省が「令和5年度建設投資見通し」として公表した「建設投資(名目)推移」です。

図版引用元:一般社団法人建設業連合会 建設業デジタルハンドブック

建設投資は1992年度の84兆円をピークに減少傾向が続き、2010年にはピーク時の半減となる41.9兆円まで減少しました。その後は東日本大震災の復興需要や民間設備投資によって増加傾向となり、2023年度の建設投資は前年度比2.2%増の70兆3200億円で、このうち政府投資は前年度比4.5%増の25兆3400億円、民間投資が前年度比1.0%増の44兆9800億円となる見通しです。

建設投資の内訳は、民間投資が全体の64.7%、政府投資が35.3%を占めています。工事別では建築が62.7%、土木が37.3%となり、民間投資の大半は建築工事。政府投資の大半は土木工事となります。

今後も尽きない建設需要が見込まれる

少子高齢化が進む我が国で、建設業の未来に不安を感じる人もいることでしょう。しかし、日本では、高度経済成長期に集中投資した交通インフラなどが、順次老朽化を迎え、今後は再整備が必要となっており、繰り返す大型地震や集中豪雨、近年中に予想されている、南海トラフ地震や東京直下型地震への防災・減災対策など、国内建設需要は尽きることなく続きます。人口問題に起因する都市まち再整備や交通網の整備なども大きな課題です。

建設企業は国内需要だけではなく、海外に進出しています。新型コロナの影響で一時的に急減した新興・途上国からの海外建設受注が再び活況となり、2023年度は2兆2,907億円と過去最高額を更新しています。

建設業の2024年問題とは

建設業の2024年問題とは、2024年4月に「働き方改革関連法」が適用されることで発生する、建設業の人手不足やコスト増大などのさまざまな課題の総称です。

働き方改革関連法は2019年に施行され、「時間外労働の上限規制」が盛り込まれていますが、建設業においては環境改善に時間がかかる点を考慮し、適用まで5年間の猶予が与えられていました。2024年4月で猶予期間が終わり、建設業においても残業規制などが盛り込まれた改正労働基準法が適用されることになりました。

時間外労働は他産業と同様に上限規制が設けられましたが、無理なく実現するには業界をあげてシステム化を進めることが必要不可欠です。

厳しい工期によって、恒常的な残業とならぬよう、国土交通省は「適正な工期設定のためのガイドライン」を提示して、週休二日制を実現する工期設定の推奨をしています。また建設企業の労働時間管理徹底策として、ICTツールを活用した最新勤怠管理システムを導入して、勤怠管理と残業アラートの設定をしたり、「ノー残業デー」の実施に取り組んだりしています。

また労務環境の改善や若手人材の育成策として、技能職は国土交通省による「建設キャリアアップシステム(CUUS)」で、経験(就業日数)や知識・技能(保有資格)、マネジメント能力(職長経験・登録基幹技能者講習)を客観的に把握できる仕組みを進めています。

ゼネコン等では人材に対して、キャリアパスを明確化して、CT(情報通信技術)を活用した体系的な教育プログラム(Eラーニング)の提供を行い、スキルアップや資格取得のサポートを行い、その成果から、個人に昇進・昇格の機会提供をすることなどを進めています。

2024年問題は建設業界にとって大きな課題ですが、適切な対策を講じることで、労働環境の改善と持続可能な業務運営が可能となっていくのです。

建設DXが建設業界を変えていく

建設業界では「人材不足と技術継承の問題解決」、「働き方改革」、「生産性の向上」を実現するために、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めています。

「AIの活用」、「クラウドサービスによる情報共有」、「BIM・CIMによる設計の効率化とデータ共有」、「ドローンによる測量や画像診断」、「遠隔操作を可能にするICT建機の開発と導入」などが進められています。

かつては「一品受注生産」、「現地屋外生産」、「労働集約型生産」という業界の特性で、自動化やシステム化が困難といわれた建設業も、建設DX導入により、その未来は大きく変わっていく可能性があります。

その導入はまだ始まったばかりで、日進月歩で新たな開発が進んでいますので、今後の展開に目が離せないように感じています。就活生の皆さんは、業界・企業研究の際にはぜひ建設DX導入状況について着目してください。

 

(本記事は総合資格naviライターkouju64が構成しました)