[建設業の基礎知識]2024【2】職種・業種編

建設業の基礎知識【1】では、業界の役割や特徴を解説し、国内・海外の建設需要や、2024年問題、その解決策になりうる「建設DXの導入」までを解説しました。

今回は、建築系学科や土木系学科の学生が建設業に進路をとろうとする際に、自分が「どのような仕事をしていくのか?」、あるいは「どのような仕事がしたいのか?」を考えていく際のヒントになるようなお話をしたいと思います。

建設業は全国に約47万9,000業者が存在する

建設業を開業するには、その工事が公共工事であるか民間工事であるかを問わず、建設業法第3条に基づき建設業の許可を受けなければなりません。

ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合には、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいこととされています。*1

建設業許可は、土木一式工事と建築一式工事の他に27種の専門工事の許可があります。

2024年5月、国土交通省は、令和6年3月末現在の建設業許可業者数が全国479,383業者で、前年度からは4,435業者(0.9%)の増加となったことを発表しました。

建設業許可業者数は、平成30年度末以降増加傾向にあり、前年度は新型コロナの影響等で減少となったものの、令和5年度末の業者数は再び増加となったようです。

建設業界はピラミッド構造

建設業界は「ピラミッド構造」であると言われています。下図を参照いただくと、図示された三角形の頂点に位置するスーパーゼネコンから準大手ゼネコンやサブコンへと矢印が下りています。広がっていく仕事の受発注の流れ、ならびに事業者数を表示しています。

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このピラミッドの頂点にいるゼネコンが、民間や国や地方公共団体から仕事(建設工事)を受注します。ゼネコンが受け持つ業務は、建設工事全体を統轄することになり、実際に現場で工事を行うためには、サブコン(専門工事業者)を活用する必要があります。

ゼネコンは仕事を受注すると、関係会社や取引業者に建設工事の発注を行います。ゼネコンから仕事を受注するのは、サブコンになります。ゼネコンは仕事を受注するので、元請企業。一方で元請企業であるゼネコンから仕事を受注するサブコンは下請け企業という関係になります。

しかし下請けは1事業者だけではありません。ここでも、建設業許可業種は複数に分類されているため、下請け企業の1事業者で全ての工事を賄うことができません。そのため、サブコンも自身で工事できない範囲の工事を必要な許可を持つ建設業者に発注します。ゼネコンから仕事を受注した事業者を「1次請け」と呼び、1次請けから仕事を受注する事業者を「2次請け」と呼びます。2次請けの工事は大半が設備工事になります。

ピラミッドの頂点に位置するスーパーゼネコンは5社ですが、準大手・中堅ゼネコンは約20社。そして地方地場ゼネコンは約2万4,000社。地方中小建設会社は約19万社と、ピラミッドの下方へ、裾野が広がるように業者数は増えていきます。

図の右上に「官公庁、商社代理店、不動産・デベロッパー、鉄鋼大手」と図示されていますが、発注者(建設主)を表示したものです。官公庁に対しては、建設コンサルタントが土木工事の企画・設計提案をしており、ゼネコンが施工する建築の設計は設計事務所が設計提案するため、それぞれ図示されています。

住宅については、建築主が個人になる点はゼネコンと異なりますが、同様に住宅メーカー等が住設・建材メーカーや設備工事業者と受発注の関係にあります。

一般にはピラミッド上部に位置する方が、大規模で安定した経営基盤をもつ大手企業になっています。また実際にはサブコンや中小建設業者の中にも、特殊な施工技術を有するなど他社への優位性を確保している企業もありますので、企業研究をする際には強みとなる技術や実績が着目すべきポイントになります。

建設業の主な職種と業種

学生に「自分がやりたい建設系の仕事」を問うと、「設計か施工」で答える傾向がありますが、実際には、建設業にはもっとさまざまな職種があります。

確かに募集職種としては、設計・施工が大半という傾向はありますが、案外、他の職種を知らないだけということもありますし、実際に就職する際にも、ジョブ雇用のように専門職として入職することもあれば、総合職として複数の職種を経験してから、適職に就いていくキャリアプランもありますので、職種と業種は全体を見て、自分がどのような仕事をしたいのかをイメージし、志望進路を決めていくのがよいと思われます。

下図では「技術研究・技術開発」、「調査・企画・計画」、「設計」、「施工」、「運営・維持管理」の順を「川上から川下」と表現しています。

気になる職種・業種は、さらに企業ごとの具体的な内容確認と、実際の募集状況などを調べていきましょう。

また就きたい職種によっては、大学院に進学して専門研究をしておくことも必要となってくるでしょう。望むキャリアを得るには、希望進路と学びを結びつけていくことも重要です。

 

*1

ここでいう「軽微な建設工事」とは、次の建設工事をいいます。

[1]建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事

[2] 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事