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特集【7】スターリンク(米SpaceX)が建設工事を革新!KDDIと清水・竹中でトンネルや超高層など活用の幅が拡大中!【建設DX】
米SpaceXが手掛けるスターリンク(Starlink)とは?
イーロン・マスク氏率いる米スペースXは2019年11月11日、自社の宇宙インターネット「スターリンク」を構成する衛星60機を搭載した、ファルコン9ロケットの打ち上げに成功しました。
写真:ファルコン9ロケットの打ち上げ (C) SpaceX
スターリンク(Starlink)は、スペースXが構築を進めている宇宙インターネット計画で、地球を覆うように大量の衛星を地球低軌道に打ち上げ、全世界にインターネットをつなげることを目指しているものです。同社の計画では、2020年代中頃までに総数約12,000基の人工衛星を3階層にわたって展開するとしています。
日本ではKDDIが「Starlink Business」の提供を開始。そのメリットは?
日本では、KDDIが2022年12月に国内法人向け「Starlink Business」の提供を開始しました。スターリンクは高度約550㎞を周回する低軌道衛星です。
一般的な衛星通信に使用する静止軌道(GEO)衛星は、高度約3万6000kmを周回していますが、スターリンク衛星はGEO衛星の約65分の1と地表に近いため、低遅延・高速通信を実現しやすいことが最大のメリットです。
日本では、専用アンテナとルーターを設置することで、ほぼ全土で通信が可能となります。この強みに建設会社が注目し、次第に活用の幅を広げています。
新たな通信サービスが建設現場をどう変えるのか?本記事ではその事例を紹介したいと思います。
国内初、清水建設がスターリンクによる建設中トンネル坑内の通信エリア化を実現
清水建設、KDDIと独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構は2024年7月25日、清水建設が建設中の北海道新幹線 渡島トンネルにて、国内で初めて、スターリンクを活用したauの通信エリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」を活用した、4G LTEの通信エリア化を実現しました。
従来、トンネル坑内の通信環境はWi-Fi機器で構築されていましたが、大型の工事機械による遮蔽影響で通信エリアが数十メートル程度と狭いことや、長いトンネル坑内全体をカバーしようとすると、必要な機器数が多くなり、設置・メンテナンス作業が煩雑になるといった問題がありました。
また、掘削作業での発破による影響を避けるため、アンテナ設備などの設置場所に制限があり、切羽から200メートルの範囲には通信環境を構築することができませんでした。
「Satellite Mobile Link」の採用により、最小限の設備で約4キロメートルの範囲に通信環境を構築し、切羽付近も含めたトンネル坑内で緊急通報を含めた音声通話や、データ通信が可能となりました。
これにより緊急対応時の関係者との迅速な連絡や、電子図面の活用による効率的で高度な施工管理、高解像度の映像伝送による施工立会の遠隔臨場などICT活用を飛躍的に進めることが可能となりました。
また、発注者による効率的な監督業務も実現しています。今後は、建設機械の遠隔操作など、建設現場のさらなるDX化が期待されています。
「Satellite Mobile Link」によるトンネル坑内通信エリア化の効果
竹中工務店が、スターリンク活用で建設現場のデータ通信網を完全無線化
2024年7月30日、竹中工務店は建設現場でスターリンクを活用したデータ通信網を構築して、通信網構築にかかる時間を約8割削減したと発表しました。
同社は札幌で進む「(仮称)アクサ札幌PJ新築工事」でデータ通信網を構築しており、これは建築面積5000平方メートル、20階建ての建物規模で、2年の利用期間を想定した場合に、コストも3割程度削減できると試算しているとのことです。
この現場では、屋上にスターリンクアンテナを設置してインターネット回線を導入し、小型無線通信装置「ecdi」を用いてフロア間に電波を伝送。さらに、4G(第4世代移動通信システム)/LTEの通信環境を構築できるソフトバンクの「sXGP」で、フロア内に広域ネットワークをつくり上げたものです。
出所:最先端技術を組み合わせ、建設現場データ通信網の完全無線化を実現(2024.07.30竹中工務店プレスリリース)
建設現場で施工ロボットや現場管理アプリなどのICT機器を使用するには、インターネットデータ通信網が不可欠ですが、現場外からの光ファイバーケーブル配線や現場内でのLANケーブル配線、各フロアへのWi-Fi基地局設置などには、これまで多大な時間と手間を要していました。
今後、スターリンクを活用した通信網がパッケージ化されて、全国の建設現場へ普及、展開することで、建設業界全体のDXに貢献することでしょう。
(本記事は総合資格naviライター kouju64が構成しました。)