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特集【7】都市交通インフラの要「鉄道業界」土木技術職の基礎知識【建設知識 土木編】
都市交通インフラの要といえる「鉄道業界」。今回はその中でも、エキスパート職やプロフェッショナル職の一つである、「土木技術職」に焦点を当てて、仕事内容や入社後のキャリアパスを中心に解説していきます。
鉄道業界の土木技術職とは?
鉄道業界の仕事というと、一般的にイメージするのは運転手や車掌、駅員の仕事だと思います。しかし、鉄道業界にはさまざまな仕事があり、多くの人が関わることによって成り立っています。
鉄道業界土木部門の主な業務はトンネル、橋梁などの土木構造物や線路の保守、改良工事の計画や施工管理を担当することです。
普段は目にする機会は多くありませんが、私たちが毎日快適に鉄道を利用でき、時間に正確に列車が運行されている裏では、多くの繊細な作業が行われています。
最近では列車ダイヤの高密度化や車両の長編成化によって線路への負担が増しているため、これらの業務は非常に重要といえるでしょう。
土木技術職の具体的な仕事内容は?
鉄道業界土木部門の業務には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
企業によって、多少は異なりますが、土木の職種は、線路や構造物の保守業務、改良工事に関する業務の2つに分けられます。それぞれの業務の特徴を紹介していきます。
【1】保守業務(検査・メンテナンス)
保守業務とは、鉄道システムの基盤を成す線路やトンネル、橋梁などの土木構造物を最適な状態に維持管理していくとともに、設備更新、自然災害対策工事など、構造物の強化を行う業務です。
具体的には、線路や土木構造物の調査を行ない、補修や改良が必要な箇所があれば、その修繕・改良工事の方法を検討して、計画・設計、工事発注、施工管理を担当します。
線路の保守は「保線業務」とも呼ばれます。線路の歪みやつなぎ目の間隔、ボルトの緩みなど、ミリ単位のズレをも見逃さない、繊細な観察力が求められます。
日中は担当路線を巡回し、亀裂や破損等の異常がないかをチェックします。夜間には、保守用車を走らせて、計測器を使った検査を行います。
土木建造物の保守では工事計画の立案後に、工事を施工するグループ会社へ発注を行うなど、関係各所との連携により仕事を進めていきます。そのため、土木構造物に関する十分な知識が必要となるため、この職種は土木系学科の卒業生を採用しています。
【2】改良工事業務(調査・設計・監理)
改良工事業務では施設改修工事や連絡線設置工事、横断通路を設置するなど、鉄道施設の大規模な改良工事を担当します。
自治体や施工会社(ゼネコンなど)と協議を経て、設計・施工管理を進め、長い工期の工事も多くなるため、駅や路線など関係部署と調整が必要となります。そのため、技術だけではなく、コミュニケーション能力が必要となる業務です。
土木技術部門は、鉄道に関わる全ての構造物に関わるわけではなく、ターミナル駅の改良や新駅建設工事、生活サービス関連施設などに関しては、建築部門の仕事となっています。
【3】その他業務
保守業務と改良工事業務の他に、以下のような業務があります。
●設備メンテナンス(検査等)
線路を定期的に検査し、修繕の要否を判断します。検査の結果、措置が必要な箇所については修繕工事を実施します。
●設備メンテナンス(技術管理等)
線路の検査・修繕について、技術的基準を検討するとともに、新しい検査手法・技術の検討やメンテナンスにかかわるルールの検討を行います。
●指令業務(運転保安、作業統制等)
施設指令室が設備故障の有無を24時間体制で監視しています。設備故障が発生した際は、速やかに現地確認を実施し、早期復旧できる体制を整えています。
●研究開発
より効率的なメンテナンス方法や新しい軌道材料の研究を行っています。技術開発は研究開発センターだけでなく、現場第一線でも実施しています。
●国際事業
東南アジアなど、海外の鉄道事業に対して、技術支援や高速鉄道建設プロジェクトに参画することもあります。
土木技術職の魅力とやりがい
土木技術職の魅力や、やりがいには、どのようなものがあるのでしょうか。
鉄道業界は、駅を中心に街ができるなど、昔から社会インフラの中心となっています。
土木部門の仕事は、お客様から直接、感謝の言葉を貰う機会は多くはないかもしれませんが、公共性が高い業界で働けることが一つの魅力になるでしょう。自身の仕事が、多くの人の安全・安心を支えていることが、大きなやりがいや喜びにつながります。まさに社会に求められている大切な仕事といえるでしょう。
また、大規模工事に関わる機会も多いので、影響の及ぶ範囲が広く、関係者も多岐にわたりますので、責任が大きい分、達成感が大きい仕事となります。自分が設計したものが形として残ることも魅力の一つです。
鉄道業界の土木部門に就職するには
鉄道会社の土木技術部門は専門知識を必要とするため、土木工学、社会基盤工学、都市工学など、主に土木に関する分野を専攻されている方を中心に採用されています。自分の専攻が採用学部に含まれているのか気になった方は企業の採用実績を調べてみましょう。
土木技術職のキャリアパス
エキスパート職、技術職の一つである土木技術職は、一般的に入社時に配属された部門で、現場でのキャリアを積んでいきます。異動も部門内で、技術を磨き、経験を重ねながら、その道のプロフェッショナルとしてキャリア形成していきます。
また、関連業務を行うグループ会社に数年間出向して、技術や経験を積む場合もあるようです。
土木技術職募集の参考として、JRや京王電鉄、京浜急行電鉄の応募要項からまとめた資料を掲載します。いずれも2025年卒募集の情報です。
鉄道は毎日多くの人に利用されていますが、土木部門の仕事については知らなかった方も多いと思います。鉄道環境を保つために細心の注意を払い、日々業務に取り組む土木の仕事は、安全・安心で快適な鉄道運行に欠かせない、重要でやりがいのある仕事といえるでしょう。
本記事を読んで興味を持った方は、業界各社の採用ページを確認したり、説明会へ参加したりして、さらに詳しく業界研究を進めていきましょう。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)