特集【8】都市交通インフラの要「高速道路」土木技術職の基礎知識【建設知識 土木編】

特集【7】では鉄道業界を取り上げましたが、今回は、引続き、都市交通インフラの要となる「高速道路」業界から、NEXCOに焦点を当てて解説していきます。

 

NEXCO(ネクスコ)とは?

NEXCO(ネクスコ、Nippon Expressway Company)は、2005年10月1日に、日本道路公団(JH)の分割民営化により発足した3社の統一的名称です。高速道路株式会社法で規定された特殊会社であり、東日本高速道路(NEXCO東日本)、中日本高速道路(NEXCO中日本)、西日本高速道路(NEXCO西日本)があります。

注)高速道路株式会社法では道路関係4公団を民営化した6つの株式会社の事業範囲等が定められました。NEXCO以外の3社は、本州四国連絡高速道路株式会社(JB本四高速)、首都高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社です。

高速道路業界の社会的使命とは?

高速道路の役割は大きく分けて以下の4つといわれています。

1.地域活性化

高速道路のネットワークを拡大することで地域産業の振興や雇用拡大に貢献するという、地域社会活性化の役割を担っています。

2.医療アクセスの改善・支援

救急車だけが退出できる緊急退出路を設けたり、道路上をドクターヘリが活用するなど医療アクセスの改善により支援を行ないます。

3.物流支援

日本全国の道路全体に対して高速道路は1%未満にも関わらず、国内貨物輸送量の約5割を担っているという重要な機能で物流を支援します。

4.災害対応

震災時の早急な道路復旧、避難・救助・物資輸送など、人々の命を助ける防災対策としての側面も持っています。

NEXCO応募職種と業務内容

NEXCO各社の新卒採用形態に大きな差異はありませんが、用語等はNEXCO東日本に合わせて掲載しています。

【1】事務系

高速道路の企画業務や経営を支えるコーポレート業務など多岐に渡ります。

企画業務には用地取得業務やサービスエリアにおける新規企画業務、コーポレート業務には「経営企画、総務、法務、財務、広報、人事等)」があります。

【2】土木系(土木)

主に道路やサービスエリアの管理、建設の仕事になります。

管理業務では、道路の維持修繕業務として、道路構造物の補修、老朽化対策、機能向上のための工事を行います。

また道路の建設業務では、道路・橋梁・トンネル・各施設の具体的な構造設計、地方自治体や沿線地域に暮らす方々との協議、建設工事による開通までを担当しています。

【3】施設・設備系(電気、システム、機械、建築等)

主に電気、システム、機械、建築の仕事になります。

高速道路の各種設備に必要な電力を供給する受配電設備の管理、渋滞や事故などの高速道路上の情報を収集・提供する道路管制システムの運営、さらにトンネル非常用設備、トンネル換気設備、融雪設備など、機械設備の点検業務があります。

NEXCO土木技術職のキャリアパス

土木技術職の携わる事業や仕事は幅広く、道路事業、収益事業、コーポレート事業の全域にわたります。土木技術職は、発注者の立場で意思決定し、プロジェクトを進めていく技術職として、国家公務員等と同様に、管轄地域の管理事務所などに赴任して、順次、異動を重ねて幅広い業務経験を積みながら昇進、昇格していくことになります。大学院で専門分野の研究を修めて入社すると、業務経験を積んだ後に、設計部門や技術開発部門で研究開発職を目指すキャリアパスもあります。

3つの主要な道路事業(管理・建設・技術開発)

1.管理事業

道路管理者として、グループ会社と連携を図りながら、点検や補修計画を立案。補修工事の発注、工程・品質・安全管理など高速道路の維持管理に係るすべての業務をマネジメントします。

2.建設事業

高速道路の計画、設計から建設工事、開通までをマネジメントしていきます。

計画段階では、新たに道路が必要なのか、収益性や環境への影響など様々な視点から検討し、国から許可を得て事業がスタートします。

設計、建設工事段階では、新技術や新工法も採用し、耐久性に優れ、品質の高い道路を経済的に建設します。計画から開通までは多くの時間を要するため、携わった路線が開通したときの喜びはひとしおです。

3.技術開発・環境事業

これからの高度な高速道路をつくっていくために、株式会社高速道路総合技術研究所などのグループ会社と協同して、新技術の開発や技術基準の整備などを行います。

また高速道路の緑化による自然環境の保全や防音対策など生活環境への影響低減対策を行うなど、開発した技術を活用して、環境保全に取り組みます。

NEXCO土木技術職の魅力とやりがい

発注者として大規模な事業プロジェクトに参画できる点が最大の魅力とされ、「技術者であれば心躍る」と表現されています。

重要インフラの開発や整備は需要が尽きることはなく、特に近年は老朽化対策で補修やリニューアル案件も増えていく一方です。高速道路のもつ重要な役割を支える仕事は、公共性が高く、また男女を問わず、長く働ける安定性が高い職場といえます。人材の層が厚く、教育研修制度や福利厚生などが万全の体制であることも大きな魅力であるといわれます。

やりがいについては、やはり大規模プロジェクトに計画段階から関わっていく仕事になるため、竣工や高速道路の開通など、大きな達成感を得られる点があると思います。設計したものが永く形に残ることや、地域や産業、多くの人への貢献が実感できることも、やりがいにつながることでしょう。

本記事を読んで興味を持った方は、各社の採用ページを確認したり、説明会へ参加したりして、さらに詳しく業界研究を進めていきましょう。

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)