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特集【10】都市交通インフラの要「道路を築く!」道路舗装会社、土木技術職の基礎知識【建設知識 土木編】
建設系学生が活躍する進路として、都市交通インフラの建設を担う「鉄道業界」、「高速道路業界」について、過去記事で取り上げてきました。
本記事では続編として、実際に道路を築く「道路舗装会社」について解説していきます。
都市交通インフラ、前記事未読の方は、この機会にぜひご確認ください。
特集【7】都市交通インフラの要「鉄道業界」土木技術職の基礎知識【建設知識 土木編】
特集【8】都市交通インフラの要「高速道路」土木技術職の基礎知識【建設知識 土木編】
道路舗装工事業者の概要
舗装道路には人の歩行や車の走行を安全、快適にする役割があります。国内で工事を手がけるのはNIPPOや前田道路などの専門工事業者のほか、ゼネコンの一部門が請け負っています。また高速道路会社は自社が管轄するエリアの補修などを手がけています。道路舗装工事は多くが公共工事で、関連企業の業績は国・自治体、高速道路会社の予算や計画に大きく左右されるものです。
国土交通省によると、道路の舗装が行われるようになったのは東京に自動車が登場した明治36年。それまでは、坂道が敷石で舗装されたり、馬車のための砂利道がつくられたりしていたということです。
現在では多くの道路がアスファルト舗装ですが、理由は短い工期で施工できて初期コストが安く、走行がスムーズであるためです。部分補修であれば通常の走行を妨げることがなく、短期間で修復ができることも大きなメリットですが、耐用年数は10年程度で、コンクリート舗装などに比べて劣化が早い欠点もあります。
インフラ老朽化に対する予防対策が課題となっている現代では、補修や維持管理に加えて、舗装材の性能向上や新たな開発が求められており、道路舗装工事業者は、予防保全やアスファルト合材の製造・販売に取組んでいます。
本記事では、道路舗装専門業者を中心に解説していきます。
道路舗装会社の土木技術職について
1.施工管理職
建設工事は様々な会社が協力しあってはじめて成り立ちます。施工管理職は現場の指揮を取り、協力会社を統括して工事を完成に導く仕事です。そのために工事における安全・品質・工程・原価・環境の管理を行ないます。
2.機械職
現場を調査し、重機を扱ってできたものをチェックする仕事です。現場で活躍する機械の整備・管理のほか、現場に合わせて機械を改造したり、操縦したりします。近年はICT技術で自動制御する重機も増えています。
3.技術職・開発職
新材料の開発や製品化のための技術開発を研究施設で行ないます。アスファルト合材は、プラントで製造して品質管理を行ないます。
実際に現場に出向いて、支援業務を行ったり、研究成果を学会で発表したり、自社製品を展示会で紹介したりすることも大切な仕事です。
道路舗装大手8社の決算業績(2023年度)
道路舗装工事業者大手は、近年、系列建設会社や持ち株会社の子会社化に伴い、非上場企業も多くなっています。下記図表は2024年3月期決算の業績数値を表としたものです。(連結決算の数値を優先し、単体決算は特記しています)
道路舗装大手8社の沿革・特徴
以下、売上高順に道路舗装大手8社の沿革・特徴を要約します。
1.株式会社NIPPO
創業1907年、設立1934年と歴史は古く、本社は東京都中央区京橋に構えています。道路はもちろん、空港や流通施設、スポーツ施設から一般建築の調査、設計、管理などを幅広くカバーするほか、不動産取引、ホテルの運営、公共施設等の企画や建設などを担います。またアスファルト合材等の製造、販売も行っています。ENEOSグループ。
2.前田道路株式会社
1930年設立。東京都品川区に本社を構えています。土木建築工事の請負、設計、監督のほか、土木建築工事の諸材料の製作・販売を行っています。事業内容は道路舗装、道路土木、宅地・工場敷地造成工事や空港滑走路の整備から、商店街や広場等の景観事業、都市公園、道路緑化といった緑化事業などを手がけています。準大手ゼネコン、前田建設工業とともにインフロニアHDグループ。
3.日本道路株式会社
1929年に創業された道路舗装会社。東京都港区に本社を構えています。道路建設工事や舗装工事、環境整備のほか、賃貸・不動産取引事業、建設コンサルタントなど幅広く事業を展開しています。高速道路や一般国道、空港の滑走路の舗装なども施工。野球場の人工芝やサッカー場の整備も行っています。
4.鹿島道路株式会社
1958年設立。東京都文京区に本社を構えています。大手ゼネコン鹿島建設関連会社で、舗装工事を中心に、道路・橋梁・空港・ダム・テストコースなど、さまざまな建設を扱っています。
5.東亜道路工業株式会社
1930年に設立。東京都港区に本社を構えています。道路建設、土木、景観・スポーツ事業などを進めており、アスファルト合材などの商品を販売する販売事業も行っています。また同社では工法開発や基礎研究、製品開発も推進しており、茨城県にある技術研究所で日々、研究が行われています。独立系。
6.大成ロテック株式会社
大手ゼネコン大成建設の完全子会社で、1961年大成建設 道路部が独立して大成道路株式会社として設立したものです。東京都新宿区に本社を構えています。道路や空港の設計・施工、道路舗装の材料となるアスファルト合材の製造や販売なども手掛け、建設業界において幅広い事業を展開しています。
7.大林道路株式会社
1933年、東洋舗装株式会社として設立。1967年大林道路に社名変更。2017年、大手ゼネコン大林組の完全子会社となりました。東京都千代田区に本社を構え、舗装工事の他、一般土木、管更生工事※等も手掛けています。
※管更生工事とは、老朽化した配管を内側から補強して再利用する工事です。道路を掘り返すことなく行う非開削工事で、管の性能を新設管と同等以上に高めることができます。
8.世紀東急工業株式会社
1950年設立。東京都港区に本社を構え、道路舗装工事業を中心に展開。合材の製造販売から土木事業、景観、スポーツ事業へと事業領域を広げています。さらに3Dを用いた3次元モデルや路面維持工法などのほか、省エネルギーを実現する技術開発を行っています。
まとめ
道路舗装各社は、総合建設業に比較すると、売上規模は少なくなりますが、メインの道路舗装工事が公共工事になるため、安定的な需要が続いている業界といえます。施工管理職や機械職は建設工学系学部卒や高専卒が多く入職しており、技術開発職は大学院で専門研究を修めた人材が入職していく傾向にあります。
多くの建設業と同様に、近年はICT技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)に取組んでおり、働き方改革の一環として、日本全体で取組むダイバーシティにより、女性が活躍できる職場環境づくりを強力に進めています。
道路は、人が働き生活するうえで大切な施設であり、都市交通インフラに興味をもつ人は、総合建設業や高速道路会社とともに進路として研究をしてみてもよいと思います。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)