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サブリース業界(賃貸開発・管理)の基礎知識
サブリース業界ってなに?キーワードは「土地活用」
「サブリース」という用語は、初めて聞かれた方も多いと思いますし、「聞いたことはあるけど、内容は詳しく説明できない」人はもっと多いと思います。学生には、この分野は疎いものですね。
そんな皆さんでも、「土地活用」というのはテレビCM等でよく聞く用語だと思います。仮に皆さんが土地を相続したとします。すると、まず相続税がかかり、登録免許税を払って、土地を自己名義に変更登記しなければならず、以降は毎年、固定資産税を払って維持していかなければなりません。するとお金は出ていく一方になりますね。
そこで土地から収益を得る方法を考えることになります。それには、地目※や立地によって、いくつかの選択肢があります。例えば駅前なら駐車場。山林、原野、雑種地ならば、最近はメガソーラー施設が目立ちます。宅地で人が住まうのによい環境であれば、やはり賃貸住宅でしょうか?
この賃貸住宅の需要に対して、土地の所有者に働きかけて、賃貸開発・管理を請負、所有者に変わって、入居者に住宅を賃貸借する業態が「サブリース業界」です。
※地目=不動産登記法で定められている、土地の種類や用途区分のこと
サブリース契約の仕組み
サブリースは賃貸住宅の管理方法の1つです。管理方法にはいくつか種類がありますが、その中でも賃貸住宅の管理を一任できるサブリースは、最も貸主の負担が少ない賃貸形態といえます。契約の仕組みは次の通りです。
出所:消費者庁
上図の通り、サブリースは2つの賃貸借契約で成り立っています。1つは所有者とサブリース業者が締結するマスターリース契約。そしてもう1つはサブリース業者と入居者が締結するサブリース契約です。所有者と入居者は、直接、賃貸借契約を結ばないため「転貸」という形になります。
管理受託方式との違い
所有者と入居者が直接、賃貸借契約を締結し、管理のみを管理会社に委託する方法を「管理受託方式」といいます。サブリース契約では、サブリース会社が賃貸借契約の当事者となりますが、管理受託方式では、管理会社は管理のみを請け負います。
空室保証・滞納保証
サブリースでは契約内容に応じて、所有者に対し「空室保証」や「滞納保証」が付保されるのが一般的です。この2つの保証により、空室の間も、入居者に滞納があった場合も一定の家賃収入が保証されます。
サブリースのメリット
所有者が安定した賃貸収入が得られることがメリットです。管理だけを委託する場合、所有者の「負担」は軽減しますが、空室や赤字に対する「不安」までは解消されません。サブリースでは、空室保証や滞納保証があるため、収益の見通しが立ちやすく、安定した賃貸経営ができます。
賃貸経営初心者にも安心
サブリース契約では、入居者にとって貸主はサブリース業者となります。入居者間で発生したトラブルや滞納などの諸問題に際して対応するのも基本的にはサブリース業者となるため、初心者でも安心して賃貸経営を始められるでしょう。
サブリース業界にはどのような職種があるか
業界大手が新卒募集している職種は下記の通りです。
1.総合営業職
2.設計職・施工管理職・積算職(技術職)
3.事務系総合職・システムエンジニア職
上記の内、建築学生が通常とる進路は2.技術職となります。
営業職は地主をみつけて、提案を成約に結び付けていく仕事です。賃貸住宅1棟あたりの戸数は平均20戸と言われており、賃貸住宅の建設費は高額ですので、やりがいと同時に、何棟も成約するベテランになるまでは大変なことも多いとよく聞かれます。
事務系はスタッフ部門を除くと、主に賃貸物件の管理や入居者募集を行います。この業務は別会社や別チャンネルで行っている企業も多いです。
サブリース会社では、ほぼ自社で設計・施工をしていて、大型物件が多くなるので、技術職は一級建築士や1級建築施工管理技士の取得が必須となっています。このため、技術職の資格取得支援や取得後の報奨金、手当などは手厚い企業が多くなっています。
サブリース業界大手企業について
サブリース業界大手企業について下記にまとめていますので確認してください。
以下が各社の沿革・概要となります。
大東建託
東京都港区に本社を置く建設および不動産会社。賃貸住宅の管理戸数では業界トップ。供給ベース、仲介でも業界第1位の大手です。名古屋市で創業し、全国47都道府県で204支店を展開しています。
主に自社が建築した賃貸住宅の居室をアパート経営のオーナーから借り上げて、入居者募集(不動産仲介)や建物管理を引受け、その物件から得られる一定収益をオーナーへ支払う「賃貸経営受託システム」(収益保証型サブリース)を全面に押し出しています。賃貸住宅の提案から施工・客付け・建物管理(子会社の大東建託パートナーズ株式会社が担当)までグループでシームレスに行っています。
レオパレス21
1973年設立「株式会社ミヤマ」が前身。当初は首都圏で不動産仲介業を行っていましたが、1985年、敷金無料型賃貸マンションの「レオパレス21」事業を開始して飛躍的に業績を伸ばしました。1989年、社名を「株式会社エムディアイ(MDI)」に変更。2000年に社名をレオパレス21に変更しています。
2018年に発覚した界壁施工不備物件に加え、施工不良が新たに最大1,324棟で見つかったため、補修工事などの費用引き当てで、特別損失を360億円追加計上すると発表し、2019年3月期連結決算の業績予想を下方修正しました。
2020年5月には業績悪化から直営店の約1割にあたる21店舗を一斉に閉店。同時に1,000人の希望退職者募集を発表しました。同年8月、ホテルレオパレス名古屋の売却を発表し、ホテル事業からも撤退しています。
2021年3月期の連結決算では、施工不備問題が2020年3月期に全棟調査を完了させ、改修工事や入居者の募集再開によって事態が進展し業績回復を見込んでいたものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、債務超過に陥り、6月29日に猶予期間入り銘柄に指定されました。翌2022年6月29日、債務超過の解消が確認されたため、上場廃止に係る猶予期間から解除されています。
東建コーポレーション
1976年、愛知県刈谷市で「東名商事株式会社」として設立され、「東名リース建設」を経て現社名となりました。当初は貸店舗建設中心の業態でしたが、その後賃貸アパート・賃貸マンションの建設に転換しています。
土地所有者向けのアパート・マンション経営代行サービスに加え、「ホームメイト」のブランド名で入居仲介サービスのチェーン展開もしています。
これら主力事業のほか、グループ会社に住宅設備機器メーカーのナスラック、子会社にゴルフ場関連事業を抱えています。
スターツコーポレーション
1969年に村石久二氏が個人創業した千曲不動産が始まりで、1972年に法人化。 1983年に千曲出版(現スターツ出版)を、1985年に千曲管理サービス(現スターツアメニティ)を設立し、1987年に子会社4社を吸収合併して「スターツ株式会社」に社名変更。 2005年に純粋持株会社に移行して、スターツコーポレーションに社名変更しています。不動産売買・賃貸仲介、建設、不動産管理、分譲不動産、出版、ホテル・レジャー、高齢者支援・保育、コンサルティング、物販・文化事業を国内、海外で展開。
賃貸仲介のピタットハウス(ピタットハウスネットワーク株式会社)は、2024年3月、スターツグループ店113店舗、ネットワーク店521店舗となっています。
まとめ
2016年に相続税法が改正されて、サブリース契約が急増したことを背景に、契約トラブルが多く聞かれるようになりました。これを背景に2020年12月15日にサブリース新法「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行されました。
サブリース新法では、「誇大広告の禁止」、「不当な勧誘等の禁止」、「重要事項説明」が義務化され、違反した事業者には罰則規定が設けられており、サブリース事業の適正化を推進する法制となっています。
本記事では大手4社の紹介としましたが、その他の大手事業者には、ハウスメーカー系列や財閥系も名前を連ねていますし、アパートだけではなく、生和コーポレーションのように、マンションやテナントビルを得意とする企業もあります。不動産・デベロッパー業界に興味をもつ学生は、同時に業界研究をしてみるとよいでしょう。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)