建設業界とSDGs「持続可能な社会実現に向けて、建設業界にできること」

SDGs(持続可能な開発目標)とは

持続可能な開発目標「SDGs」は、2015年に国連サミットで加盟国の全会一致で採択された国際社会共通の目標です。採択されて間もなく10年が経とうとしている現在、多くの人が2030年を達成期限とした「17のゴール」は目にしたことがあると思います。

SDGsとは簡単に要約すると、「世界中の誰一人も取り残さず、人間らしく暮らし続けられる世界にするために達成する目標」のことです。「暮らし続けられる」というのが、持続可能の意味を表しています。

下に「持続可能な開発目標(17のゴール)」をあらためて掲載します。

図版:持続可能な開発目標(17のゴール)

(参考:外務省「持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組」)

2024年、日本の「SDGs達成度」は167ヵ国中18位

2024年6月17日、「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)は世界各国のSDGsの達成度を評価した「Sustainable Development Report」(サステナブル・ディベロップメント・レポート、持続可能な開発報告書)の2024年版を発表しました。

日本のSDGs達成度は167カ国中18位で、前年(166カ国中21位)から3ランク上がりました。しかし、17の目標のうち、ジェンダー平等や気候変動対策など5つの目標が前年に続いて「最低評価」でした。

2024年版ランキング1位はフィンランド(86.4)で、前年(86.8)からスコアを下げたものの4年連続のトップ。2位はスウェーデン(85.7)、3位はデンマーク(85.0)、4位はドイツ(83.4)、5位はフランス(82.8)と続き、4位のドイツまでは前年と同じ顔ぶれでした。

SDGs実現に向けて建設業界ができること

建設業はものづくり産業であり、人々の暮らしや働きを支え、身体的にも精神的にも幸せだと感じられる場を作り出していく「総合生活産業」と位置づけられています。

しかし、建設を通じて地域の自然環境に影響を与え、環境負荷を発生させているということもありえます。持続可能な社会を構築するためにも「住み続けられるまちづくり」をしながら、環境負荷抑制に配慮していかないと、地球に重大なダメージを与えてしまいかねません。

建築業界に何ができるかを考える際、まず押さえておきたいのが、2019年1月にデンマーク王立美術アカデミーとデンマーク建築家協会、国際建築家連合(UIA)が編著した「17の国連SDGsに対する建築ガイド」です。

普通は17項目も目標があると、建設が担うのは、その中で幾つかを選択することになるのかと思いがちですが、このガイドブックでは、SDGsの各目標について、建築業界が果たしうる取り組みを具体例として紹介しているのです。

目標1.から目標17.まで、全20頁に渡る内容になるため引用は難しく、興味ある方は、下記からそのまま閲覧できますので、ぜひご確認ください。

(参考:「A LIST OF ARCHITECTURE GUIDE to the UN 17 Sustainable Development Goals, January 2019|17の国連SDGsに対する建築ガイド 第1版の一覧表」)

建設団体・企業のSDGs取り組み事例

建設団体・企業のSDGs取り組み事例について、その一部を紹介します。

一般社団法人日本建築学会

・2020年:「SDGs対応推進特別調査委員会」を設置

会員にSDGsへの行動規範を示し、既存の研究・作品・実践・活動などの具体的事例の共有や業界におけるSDGsへの取り組み推進を牽引。

・2021年:3月、日本建築学会「SDGs宣言」を公表。

・2022年:4月、「建築SDGs宣言推進特別調査委員会」に委員会を変更。

・2024年4月17日に『持続可能な建築・まちづくりのための日本建築学会SDGsアクション』を公表しました。

『持続可能な建築・まちづくりのための日本建築学会SDGsアクション』では、2030年までを目標とした2つの共通ゴールと7テーマの「建築SDGsアクション」を提示しています。各アクションは研究、教育、実務の3分野を考慮したものとなっています。

■共通ゴール

(1)建築SDGsゴール11(住み続けられるまちづくり)

(2)建築SDGsゴール12(つくる責任・つかう責任)

■7テーマのアクション

a.科学技術での貢献

b.健全な環境づくり

c.良好な社会ストックの維持活用

d.気候危機・地震等災害対応と脱炭素社会

e.生態系の保全と適正利用

f.衣食住の保障と平和で平等な社会づくり

g.建築とまちづくり教育

詳細については、こちらからご確認ください。

※提言:持続可能な建築・まちづくりのための日本建築学会SDGsアクション(一般社団法人 日本建築学会)

清水建設株式会社

清水建設は、顧客とともに持続可能な未来社会の実現を目指すべく、「安全・安心でレジリエントな社会の実現」「健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現」「地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現」という3つの軸から、SDGsに取り組んでいます。

出所:清水建設「シミズと創るSDGs」

 

■安全・安心でレジリエントな社会の実現

自然災害から生活・事業を守るべく、「強靭な建物・社会インフラの構築」や「施設の長寿命化」などを実施。

■健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現

誰もが安心して快適に暮らせるよう、「ユニバーサルデザインの積極的導入」や「ウェルネス空間の創出」といった取り組みを実施。

■地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現

次世代に豊かな地球を残すべく、「建物の省エネ化」や「水素エネルギーの利用」などを推進。

まとめ:建設業がSDGsに取り組む必要性

日本国内では、人口減少や少子高齢化により、建設業は担い手不足が深刻な課題となっています。そのため建設業界では、今後の仕事の在り方は、これまで通りの構造では続けていくことが難しいといわれています。つまり改革が不可避といってよいでしょう。そんな中、パリ協定に基づく脱炭素やグリーンインフラの影響を受けて、環境共生を求める声が強まっています。

建設業界は多くのステークホルダーが関わり合う産業であり、多様な価値観をまとめることが求められています。そこで共通の思考として相互理解に役立つのがSDGsの思想です。

建設業がSDGsに取り組むことは、業界が社会的責任を果たすことではありますが、その取組や成果を広く示していくことで得られる「イメージアップ」は大きなメリットです。

特に企業にとって、イメージアップは「採用」や「案件受注」に直結するといえるでしょう。

本記事では、清水建設の事例を紹介しましたが、実際には大手から中小企業まで、社会貢献の裏付けとしてSDGsへの取組を進める事例は多くなっています。

2030年を期限としているSDGsですが、その先に将来の展開もあるに違いありません。

業界研究、企業研究の際には、これらの取り組みや、設定する目標・具体的な取組と成果についても注目してみるとよいでしょう。

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)