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特集【1】i-Construction2.0が目指す建設オートメーションとは?(前編)【知っておきたい建設的常識】
はじめに ・ 【知っておきたい建設的常識】開設について
2024年12月2日、日経クロステックに「国土交通省が港湾のi-Construction2.0推進へ初会合、2040年度までに現場を自動化」という記事が掲載されました。
11月26日に開催された、「港湾におけるi-Construction・インフラDX推進委員会」に関する報道で、【建設NEWS】か【建設DX】で紹介を考えたのですが、総合資格ナビでは、これまで「i-Construction2.0」を解説したことがありませんでした。
就活生に対して、「一般常識対策は日経新聞を読むように」とお薦めしていたり、「建築系は日経アーキテクチャーや業界紙を通読するように」お話していたりします。
ただ現実には、学生はなかなか購読ができていないであろうことと、「i-Construction2.0」関連の解説をしようと思えば、2016年に開始したi-Constructionプロジェクトが、本年4月にi-Construction2.0に変わった経緯や変更された内容も説明しなければ伝わらない。建設系政策では、その他にも「国土のグランドデザイン2050」や「国土強靭化計画」、「デジタル田園都市国家構想」など、一般ニュースでは断片的に情報が伝わってくるだけであり、そもそも国が何を計画しているのか、詳細に報道される機会は希少であるため、学生向けに解説していく必要性を感じて、【知っておきたい建設的常識】を開設することにしました。
当面は、現在進行形の建設施策を中心に紹介していきたいと思います。
i-Construction 2.0は、2040年度までに「建設現場のオートメーション化」を実現するプロジェクト
国土交通省は、建設現場の生産性向上の取組として、2016年度より、ICT施工をはじめとするプロジェクト「i-Construction」の取組を進めてきました。
今後、更なる人口減少が予測されるなか、国民生活や経済活動の基盤となるインフラの整備・維持管理を、将来にわたって持続的に実施していくことが必要であることから、これまでの取組をさらに一歩進める施策として、2024年4月16日、「i-Construction 2.0」を策定しました。
i-Construction2.0では、2040年度までに「建設現場のオートメーション化」による生産性向上(省人化)に取り組みます。そのためにデジタル技術を最大限活用し、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場を実現します。
そして建設現場で働く一人ひとりの生産量や付加価値を向上し、国民生活や経済活動の基盤となるインフラを守り続けることに取り組んでいきます。
■i-Construction 2.0で実現を目指す社会(イメージ)
出所:国土交通省
建設現場を取り巻く背景・課題(i-Construction 2.0の必要性)
1.生産年齢人口の推移
○ 生産年齢人口は2040年度には、2020年度対比で約2割減少と予測されている。
2.災害の激甚化・頻発化
○ 毎年のように日本各地で自然災害が発生し、被害が激甚化・頻発化している。
※直近では2024年1月1日に発生した「能登半島地震」復興が大幅に遅れている。
3.社会資本の老朽化
○高度経済成長期以降に整備された道路橋、トンネル、河川、水道、下水道、港湾等について、建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなっていく。
i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化(目的・考え方)
国土交通省では2016年度から建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることを目標に、i-Constructionを推進してきました。特にICT施工(情報通信技術活用による施工方式)により、作業時間の短縮効果を上げることを目標としてきて、直轄事業における生産性向上比率は2015年度対比で21%と達成しました。
一方で、人口減少が更に進んでいく中で、将来にわたって持続的にインフラ整備・維持管理を実施していくには、i-Constructionの取組を更に加速し、「自動化」していくことが必要となり、2040年度までに少なくとも省人化3割、すなわち1.5倍の生産性向上を目指す取り組みとして、「i-Construction2.0」を策定しました。
下図は、i-Constructionとi-Construction2.0の「目的や考え方」を比較したものです。
出所:国土交通省
i-Construction 2.0で2040年度までに実現する目標
1.省人化(生産性の向上)
生産年齢人口が2割減少することが予測されている2040年度までに、建設現場において、少なくとも省人化3割、すなわち生産性1.5倍の生産性向上を実現
2.安全確保
建設現場で人的被害が生じるリスクを限りなく低減し、人的被害の削減を目指す
3.働き方改革と多様な人材の確保
快適な環境下での作業など、働く環境の大幅な改善を目指す。時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方や、これまで以上に多様な人材が活用できる場の創出を目指す
4.給与がよく、休暇が取れ、希望がもてる建設業(新3K)の実現
以上により「建設現場で働く一人ひとりの生産量や付加価値を向上し、国民生活や経済活動の基盤となるインフラを守り続ける」ことを目標としています。
そして、そのために必要な施策を「建設現場のオートメーション化」としています。
出所:国土交通省
「i-Construction 2.0」 と 「インフラ分野のDX」
i-Construction 2.0は、国がまずは直轄工事(公共工事)で積極的に取り組んでいきますが、インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進させることが不可欠となります。実際の工事は建設業界全体(建機メーカー、建設コンサルタント、ゼネコン、サブコン)が関わって行いますし、また、オートメーション化推進には、ソフトウェア業界、通信業界、サービス業界等との連携が必要になっています。
下図は、そのイメージ図です。
出所:国土交通省
★本記事を前編として、次回、後編(特集【2】「建設現場のオートメーション化に向けたトップランナー施策」)で具体策について解説します。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)