特集【3】デジタル田園都市国家構想の現在【知っておきたい建設的常識】

デジタル田園都市国家構想とは?

デジタル田園都市国家構想は、2021年に岸田文雄内閣の下で始動した構想です。

その目的は、「デジタルによる地域活性化を進め、さらには地方から国全体へボトムアップの成長を実現する」ためとしています。

基本的な考え方は、テレワークの普及や地方移住への関心の高まりなど、社会情勢が大きく変化していく中で、デジタルの力を活用して地方創成を加速化・深化し、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指すという方策であり、東京一極集中の是正や多極化を図り、地方に住みながら、都会に匹敵する情報やサービスを利用できるようにすることで、地方の社会課題を成長の原動力とし、地方から全国へとボトムアップの成長につなげていくものです。

デジタル田園都市国家構想総合戦略(2023年改訂版)の全体像

2022年12月23日に内閣官房「デジタル田園都市国家構想実現会議」事務局より「総合戦略」が策定され、2023年度から2027年度までの5ヵ年計画で戦略を推進していくことになりました。

総合戦略は、2023年12月26日、「デジタル田園都市国家構想総合戦略(2023改訂版)の全体像」として公表されました。以下がその内容です。

■総合戦略(2027年度までの5ヵ年計画)の基本的考え方

出所:総務省

■施策の方向

出所:総務省

上記の施策については、政策間連携、施策間連携、地域間連携を通して推進し、実現に向けて取り組んでいくことになりました。

デジタルの力を活用した地方の社会課題解決(主な施策)

地方活性化を図るには、地方の経済・社会に密接に関係する様々な分野において、デジタルの力を活用し、社会課題の解決や魅力向上を図ることが必要です。

このため、「デジタル田園都市国家構想総合戦略(2023改訂版)の全体像」で示された4つの重点施策は、分野横断的な支援を通じて地方の取組を推進します。

■地方に仕事をつくる

地方のイノベーションを生む多様な人材・知・産業の集積を促し、自らの力で稼ぐ地域を作り出します。

■人の流れをつくる

都会から地方への人の流れを生み出し、地方から流出しようとする人を食い止め、にぎわいの創出や地域を支える担い手の確保を図ります。

■結婚・出産・子育ての希望をかなえる

結婚・出産・子育てがしやすい地域づくり、若い女性を含め働きやすい環境づくりを進めます。

■魅力的な地域をつくる

地方で暮らすことに対する不安を解消し、暮らしやすく、魅力あふれる地域づくりを進めます。

出所:内閣官房(図版は筆者による作成)

主な重要業績評価指標(KPI)について

KPI(Key Performance Indicator)とは、目標達成に向けた取り組みの進捗状況を定量的に測定するための指標で、「重要業績評価指標」と表記されます。

KPIを設定すれば、目標が明確化され、各プロセスにおける達成の度合いを計測することで組織のパフォーマンスを把握できます。

デジタル田園都市国家構想総合戦略(2023改訂版)では、下記の通り、3つのKPIを設定しています。

出所:総務省

最新の動きなど

地方公共団体の取り組み

「デジタル実装に取り組む地方公共団体を2024年度までに1,000団体、2027年度まで1,500団体」という目標は2024年3月現在、1,754団体になっています。(全1,788団体の98.1%)

出所:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局(2024年6月10日)

デジタル人材育成のこれまでの進捗

2022年度から2026年度までにデジタル人材を230万人育成するため、年々取組を強化。2022年度は目標の約25万人に対し、約33万人を育成(達成率約132%)。 2023年度は、年度目標約35万人に対し、約51万人を育成(達成率約144%)。

出所:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局(2024年6月10日)

新しい地方経済・生活環境創生本部事務局の設置

2024年10月11日付けで「新しい地方経済・生活環境創生本部事務局」が設置され、旧「デジタル田園都市国家構想実現会議事務局」の所管業務は同事務局に引き継がれました。「新しい地方経済・生活環境創生本部」は、内閣総理大臣を本部長とし、副本部長は内閣官房長官、新しい地方経済・生活環境創生担当大臣、本部員を他の全ての国務大臣とする組織です。

まずは、今後10年間集中的に取り組む「基本構想」の策定に向けて議論を進める動きとなっており、2024年11月8日に「第1回新しい地方経済・生活環境創生本部」、 12月末に 「基本的な考え方」を決定することになりました。

広範な分野に取組み、国、地方公共団体、民間企業、教育機関、住民が連携してともに課題実現に向き合い、よりよい社会づくりを進めていく動きとなるため、全容がわかりにくい面があると思いますが、建設系の動きは、国土交通省が「新たな国土形成計画(全国計画)」を決定し、「建築・都市のDX」の取組として進行中です。

国土交通省の動きについては、後日、改めて解説したいと思います。

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)