特集【11】3Dプリンター活用工事が、2024年度インフラDX大賞で初の国土交通大臣賞を受賞!【建設DX】

国土交通省は2024年度インフラDX大賞の国土交通大臣賞(工事・業務部門)に、福留開発(高知市)の22~23年度仁淀川中島地区下流護岸外(その1)工事を選定しました。

本工事では、ICT(情報通信技術)建機や建設3Dプリンターを活用し、現地作業を省力化・簡略化できた点などが評価され、3Dプリンターで施工した工事として、初めて国土交通大臣賞を受賞しました。

■インフラDX大賞・国土交通大臣賞(工事・業務部門)受賞取組概要

本工事は、仁淀川の侵食対策を目的とした高水敷及び低水護岸の整備において、完全内製化による全面的ICT活用を実施することで、測量や出来形計測、写真撮影・品質管理の作業が大幅に効率化したものです。

また、福留開発は新設護岸と既設護岸との取り合わせ区間に、自由形状で護岸ブロックを造ることができる3Dプリンターを活用しました。

新旧護岸は法面(のりめん)の向きが異なるため、取り合わせ区間はねじれた形状となっており、従来はこのような河川工事では、現地の地形に合わせた施工が求められる箇所が多く、熟練技能者による手作業でなければ対応ができませんでした。

福留開発は3Dプリンターを活用することで、石積みやコンクリート張りの従来工法に比べて工期を大幅短縮することを実現しました。

工事が主に非出水期の秋から春に限られる河川工事では、工期短縮は大きなメリットとなり、ブロックの表面に凹凸や円筒を設けて、河川生物の生息環境にも配慮しました。

ICT活用の内製化がポイント。測量の工期を4割短縮

建設工事におけるICT活用は、社外へ開発依頼することが多くなっていますが、福留開発では、機器を買いそろえ、自社だけで実施できるよう内製化したことが大きなポイントになりました。内製化によるICT活用は、従来工法と比較して工期短縮や現場作業の効率化ができるだけでなく、若手技術者の早期育成などの効果も見られたといいます。さらに、同社は測量や出来形計測、写真撮影、品質管理などへ全面的にICTを活用して内製化しており、3D設計データを作成し、ICT建機で丁張りせずに施工することで、測量作業の日数を40%、労務人数を54%も削減することができました。

出所:国土交通省

2024年度インフラDX大賞、他部門の「国土交通大臣賞」は?

2024年度インフラDX大賞では、2023年度に完了した国土交通省や地方自治体などの発注工事のうち、建設現場でデジタル技術を活用した生産性向上の取り組みについて、有効性や先進性、波及性の観点から審査しています。

その審査で、全国26団体がDX大賞を受賞し、そのうち工事・業務部門を含む3部門で計3団体が国交大臣賞を受賞しました。

上記記事で紹介している、福留開発(工事・業務部門)以外の国土交通大臣賞受賞は、下記2つとなります。

■i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム会員の取り組み部門

小澤建設(長野県駒ケ根市)の22年度美和ダム上流土砂掘削工事におけるデータマネジメントの活用が国土交通大臣賞に選定されました。

本工事は、ダム内の土砂を掘削する現場と、運び出した土砂で造成する現場間が約20km離れていますが、同社は施工情報をデジタル化し、1人の監理技術者が2つの現場を管理できるようにしました。他にも、ダンプカーの積載量や位置情報をリアルタイムで把握し、車両の待機時間を減らし、工期を約3カ月短縮しました。

■地方公共団体等の取組部門

栃木県のICT・AI(人工知能)技術を活用した道路交通の円滑化が国土交通大臣賞に選定されました。

宇都宮東部地域では、LRT(次世代型路面電車)が令和5年8月に開業することで、既存道路の車線が減少することや、信号現示サイクルが複雑になるなどの交通ルールの変更により、一定程度の混乱が生じることが懸念されていました。

今回の取組では、周辺道路環境への影響を確認するため、ICTやAI技術を活用して、自動車交通流の変化や、交差点付近での挙動の変化などに着目し、LRT開業したことにより交通状況を分析すると共に、発生している課題の改善を試みました。

具体的には、WEBカメラのAI画像解析等により交通状況を分析した中で、LRTを導入する際に車線を減少させた主要地方道宇都宮向田線を避けて、並行する市道白楊高通りに過剰に迂回している状況が確認され、混雑度に偏りが生じていたため、ICTを活用した民間プローブデータにより、リアルタイムの旅行速度を計測し、LED表示板により現地で情報提供を行ったことで、並行路線の自動車交通量の平準化に寄与したことを確認したものです。

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)