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【建築学生・プロジェクト紹介】大阪電気通信大学「ニコニコのデザイン」プロジェクト
香里三井団地再生「ニコニコのデザイン」プロジェクトは、高経年団地のコミュニティ拠点づくりを目指して展開中!
「ニコニコのデザイン」プロジェクトは、大阪府住宅供給公社と大阪電気通信大学が連携し、2022年にスタートした寝屋川市の「香里三井団地再生プロジェクト」です。
大阪府住宅供給公社・大阪電気通信大学・寝屋川市による3者連携体制で、香里三井団地において、団地内の空き家や集会所を活用した多世代交流拠点づくりを想定した活動を展開しています。
プロジェクトの名称は、大阪府住宅供給公社の経営理念である、「笑顔のくらしを! Live in joyful smile!」と、大阪電気通信大学 北澤研究室の建築デザインサークル名「Create For Smile」の二つのSmileを合わせたもの!
プロジェクトを通じて、ニコニコの笑顔あふれる団地にしたい。メンバーそれぞれが、その想いを胸にプロジェクト名を「ニコニコのデザイン」と名付けたのでした。
「ニコニコのデザイン」プロジェクトのすごいところ!アピールポイントやメリットなど
2024年度代表を務める大阪電気通信大学 工学部 建築学科3年藤枝和奏さんに、「ニコニコのデザイン」プロジェクトの「すごいところ」を3つ挙げていただきました。
・Point1:大学の勉学では体験できない実在の建物やコミュニティに携わり、実務的な工程を見ることができる!
・Point2:団地に関わるフィールドワークや意見交換で見聞を広められる!
・Point3:先輩とのつながりができ、活動内だけでなく様々な知識や手法を学ぶことができる!
大阪府住宅供給公社との協働プロジェクトであることや、年齢層が幅広い団地の住民にとふれあい、直接、生の声を頂けることは得がたい体験といえるでしょう。経年が進む香里三井団地には、「住民の高齢化率40%、空き家率15%」をはじめとした多くの課題があるそうです。学生の提案を通じて、これらの課題を解決し、「笑顔にする」プロジェクトは大変意義ある活動です。
「ニコニコのデザイン」プロジェクトの主な活動
寝屋川市で、空き家問題を調査することを始めた時期に、香里三井団地で「ニコイチプロジェクト」が始まりました。それは、空き室となった2つの住戸を1つにまとめることで広さを確保し、可能な限り壁や間仕切りをなくすことで、住まい手の自由度、柔軟性を重視し、様々な生活様式や在宅でのワークスタイルに合わせることができるものです。
これをきっかけに、団地に関わる人たちを笑顔にしようと、2022年に「ニコニコのデザイン」プロジェクトが始まりました。
1年目は「古きをたずね、団地を知る」ことで、建設から50年以上経過した団地の魅力を知り、継承する。2年目は「新しきを知り、団地で実践する」ことで、現代のライフスタイルに対応する住まいを創ることを目標としました。
3年目となる2024年度は「知ったことを活かし、可能性を広げる」ことで、住民とともに団地の未来を具現化していくことを目標としています。
2025年度以降も、大阪府住宅供給公社と大阪電気通信大学、寝屋川市、国土交通省とも連携しながら、オールドタウン化した街に対して、新しい再生スキームを確立していき、地域の方々とさまざまなな分野へ体制を広げて、団地のニーズに応えていきたいと考えています。
プロジェクトの進め方は『FOR USの考え方』を基本としている
「ニコニコのデザイン」プロジェクトは、大阪電気通信大学の北澤誠男准教授と北澤研究室の学生サークル「Create For Smile」が、「香里三井団地『ニコニコのデザイン』プロジェクト〜公社と大学の連携による高経年団地のコミュニティ拠点づくりを目指して〜」を提案して、寝屋川市・大阪府住宅供給公社との三者連携協定が締結されたことから始まりました。
このプロジェクトは、寝屋川市、大阪府住宅供給公社、大阪電気通信大学の連携事業となり、国土交通省の「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」に選出されました。
北澤誠男准教授が「プロジェクトの進め方」として指導しているのが、「FOR USの考え方」です。学生たちはプロジェクトの活動や提案を検討する際には、普段からこの考え方を基準としています。
■FOR USの考え方
これまで、我々が目指すFOR USのデザイン手法を用いて様々な活動を展開している。
「ジョハリの窓」という、心理学モデル―自己分析をしながら、他者との関係を知って、コミュニケーションを模索する―という手法が建築デザインの手法にも、同じ様なモデルが必要かと思われる。
「For meのデザイン」:強制するデザインや、「For youのデザイン」:服従のデザイン、に偏ることなく、自己に寄り過ぎず、他者にも寄り過ぎないデザイン「For usのデザイン」すなわち「協働のデザイン」を考えることが、経済至上の社会では大切な手法であると感じている。
昨今、AIとか仮想空間とか、得体の知れないものが我々を支配しつつあり、コミュニケーションの機会がますます減ってきていると感じる。
建築デザインの分野でも同じである。
世の中のスタンダードに流されず、先にある未来をシッカリと見据えて、次の世代に、この社会を引き継いでいくためのデザイン手法の提案および実践である。
これが、随時進んでいくプロジェクトのイメージである。
下の段のステージ1「知る」からヒアリングやリサーチが始まり、次のフェーズでは、上の段の濃い青の部分で、その「実践」を行いながら、次のステージ2のヒアリングやリサーチも同時に進めていく、というものである。
VUCAと呼ばれる現代に、ユーザー一人一人が、誇りを持って生きられるか?
忘れてはならないのは、予算や事業規模でなく“人の視点”である。
医師は病気の前に人間を知らなければならない、と言われるが、我々建築デザイナーは、社会やそこに居る人達を絶えず知っておかなければならないと考えている。
問題は現在にしか無いと考えている。
市の中心部に都市機能を集約し、住民を誘導する計画を立て、効果があまり出せていない所が多い中、地域主導の商店街などに活気がある事、もあることも知られている。
社会が複雑化したり、工業化したりして、作ることのプロセスを短縮し過ぎてきた、のではないか。
建築デザインの力で、人々を笑顔にできる、と信じて、私達は、日々挑戦を重ねている。
■定例会:毎週水曜日に住宅供給公社とオンラインミーティングを開催。
活動は香里三井団地で実施。
■年間スケジュール(2024年度の例)
「ニコニコのデザイン」プロジェクトの活動紹介
■4月フィールドワーク(茶山台団地)
「ニコニコのデザイン」プロジェクトの参考とするために、堺市「茶山台団地」を訪問して、集会所(図書館として活用)や「DIYのいえ」等を見学しました。
■集会所改修に向けたワークショップを開催(5月11日)
香里三井団地A棟の集会所をどのように改修していくかを、住民の皆様と一緒に考える機会とするワークショップを開催しました。
事前に案内チラシを団地でポスティングします。子供から大人まで楽しんで参加していただけるように気軽な参加を募りますが、「参加無料・予約制」で案内しています。
ワークショップ当日は、「集会所模型(1/50)」を囲んで、普段、集会所を利用して感じている良いところ・悪いところ・これから利用したいアイデアを出していただき、色分けした付箋に内容を記入いただいて、模型の各部位に貼ってもらいました。アイデアが出るたびに模型がカラフルになっていき、住民の集会所に対する思いがものすごく伝わるワークショップとなりました!
今回いただいた多くの意見をもとに改修案を進めていき、ある程度形になってきたところで、お披露目会イベントを開きます。その際にも住民の皆様からご意見を頂きます。
■集会所デザイン案の住民投票(6月22日・25日)
5月に実施した「集会所改修に向けたワークショップ」で、住民の皆様から頂いた意見をもとに、3つの集会所改修案と、2つの集会所周辺の景観の案をにまとめることができました。合計5つの改修案は、学生からプレゼンを実施して、それぞれの案の良い点、悪い点を住民投票して頂きました。今回の投票結果をもとに更に案を煮詰めていき、次回イベントでお披露目をしていきます。
■夏イベント「三井の思い出竹縁日」を開催(8月31日)
7月からは夏イベント企画の準備を進めていきます。「三井の思い出竹縁日」に向けて、大阪府住宅供給公社様とともに、団地周辺に生えている竹を採取して、イベントで使用する器や竹灯籠に加工します。使い慣れないノコギリを使い、初めての竹の加工に苦戦しながらも、竹の器を約40個作ることが出来ました。
8月13日、夏イベント開催へ向けて香里三井団地でチラシをポスティングしました!「三井思い出の竹縁日」は、8月31日、香里三井団地の集会所で実施します!
その後、台風の影響で開催は延期となってしまい、9月7日に「三井思い出の竹縁日」を開催しました。小さい子からお年寄りまで、たくさんの方々に来て頂きました。三井団地の竹森から伐採した竹を使い、「流しお菓子キャッチ」や「竹の器の装飾」、「竹燈籠ライトアップ」を楽しんでいただきました。
さらに「ニコニコのデザイン」プロジェクトが提案する集会所改修案のお披露目展示も行い、多くの方に観ていただけました。
■神奈川遠征ワークショップ 9月
9月21日(土)▪︎22日(日)に神奈川県住宅供給公社が東京工芸大学と取り組んでいるプロジェクト「ミドラボ」の見学に行って来ました。
21日は、東京工芸大学で大阪府住宅供給公社の田中様と神奈川県住宅供給公社の茶屋道様による団地再生について解説講義を受けました。
22日は、ホシノタニ団地と相武台団地に見学に行きました。ホシノタニ団地では、1階部分を子育て支援センターや、ランドリースペースとカフェを組み合わせた「喫茶ランドリー」など、多様な活用方法があることを実際に見て学びました。
相武台団地では「こども食堂」が行われていたので、運営のお手伝いをしました。その他、団地再生の取り組みについて見学させていただき、住民や地域の方々と直接お話をさせていただき、たくさんのことを学びました。
■団地全体デザイン企画の提案・発表
「ニコニコのデザイン」プロジェクトでは、香里三井団地集会所の改修デザインが決まっていますが、以前から団地全体のデザイン提案も続けています。
10月以降は団地全体デザインの提案、企画発表を行いました。現在もブラッシュアップを継続中です。下図は2022年度の先輩方が提案したデザイン案です。
■冬イベント「スマホ相談会」
冬イベント企画として、住民アンケートで要望が多かった「スマホ相談会」を開催します。チラシ・ポスターを作成して、団地掲示板に掲示する他、各戸へポスティングを行いました。2025年2月6日に実施する予定です。
■大学発ベンチャー企業、「Create For Smile合同会社」設立と今後の展望
香里三井団地「ニコニコのデザイン」プロジェクトが、国土交通省の「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」に選出されたことを受けて、大阪電気通信大学建築・デザイン学部 建築・デザイン学科 建築専攻 北澤誠男准教授が、大学発ベンチャー企業として、「Create For Smile合同会社」を設立し、代表取締役に就任しました。また、同社は建築設計事務所(一級建築士事務所)登録をしました。
2024年12月下旬、「ニコニコのデザイン」プロジェクトは、令和6年度第二回の「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」に選定され、国の費用助成が決定しました。いよいよ香里三井団地集会所リノベーション計画は、実施に向けて進めていくことになりました。
「Create For Smile合同会社」で基本設計をまとめ、2月か3月には設計契約を締結する予定です。実施設計は、2025年4月から12月までに行い、施工会社と工事契約を締結して建築工事を進めていく予定です。新集会所は2026年夏頃の完成を目指していきます。
「ニコニコのデザイン」プロジェクトが関わってきた集会所改修が実現するよう、2025年度以降も、学生メンバーは更にプロジェクトに関わっていくことになります。
「ニコニコのデザイン」プロジェクトメンバー構成(2024年度)
・合計人数:5人(男性:1人、女性:4人)
・学年人数: 4年1人、3年5人、2年(3)人、1年0人
※2年は次年度新メンバーです。
「ニコニコのデザイン」プロジェクト各種情報
代表(2024年度)
大阪電気通信大学 工学部 建築学科 3年 藤枝和奏
代表メールアドレス : ec22a075(a)oecu.jp
※迷惑メール防止のため、@を(a)に変えています。
各種URL
・ホームページ : 公式ホームページ
・Instagram : 公式インスタグラム(nikoniko.project)
※本記事に掲載した図版、写真は、「ニコニコのデザイン」プロジェクト提供によるものです。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64がインタビュー取材を行い、記事構成しました。)