【脱・2024年問題】建設業界の残業時間減少は、現在も加速しているのか?【建設NEWS】

あれから1年?厚生労働省から建設業の残業実態が発表されました!

建設業に多大な影響を与えた2024年問題。2024年4月から、建設業に時間外労働の上限規制が適用されましたが、間もなく1年が経過しようとしています。

2025年2月5日、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の2024年平均(速報値)が発表されました。

この発表によれば、建設業の所定外労働時間は前年と比べて7.6%減で、月12.7時間となりました。建設業の所定外労働時間は、新型コロナウィルスの感染拡大があった2020年に8.9%減少しましたが、2024年の下げ幅は、これに次ぐものとなりました。

下表は2020年から2024年の「毎月勤労統計調査」を表としてまとめたものです。

2024年に入ると、年初から時間外労働の上限規制適用に備えて、現場の残業時間削減が進み、総実労働時間は10年前と比べて、月に10時間減少しました。

上限規制の適用が決まったのは2019年。その後、開始となるまでの5年間で、建設業界・企業はそれまでの長時間労働を前提とした就業慣習を見直し、現場の残業時間削減に向けて取り組んできました。法規制をきっかけとした働き方改革がこの1年で定着し、残業時間の削減が数字になってあらわれているのだと思われます。

それでは、残業時間減少は現在も加速しているのか?本記事では、現状について解説していきたいと思います。

残業減少を阻む「著しい工期短縮」を撤廃!「工期ダンピング対策」を強化していく!

建設業の長時間労働を是正し、週休2日を確保していくため、建設業法では著しく短い工期を設定した請負契約を締結してはならないと規定して、発注者を規制してきました。ところが実際には、工事受注を企図して受注者側から工期ダンピングしてしまう例が多いのです。

そうした現実を踏まえて、長時間労働を是正し、週休2日も確保していくため、2024年6月公布の改正建設業法では、受注者の発意による、著しく短い工期による請負契約の締結を禁止することとしています。この条項は、2025年12月に施行される見通しです。つまりこれからは受注するために「著しい短工期」を提示することはできません。

また、「しわ寄せ防止」に示した請負代金の変更協議と同様に、資材の入手困難などが生じるおそれがあると認めるときは、受注者から注文者に対して関連する情報を請負契約の締結までに通知しなければならないこととしました。

この場合、実際に資材の入手困難などが生じたときは、受注者から注文者に対して工期変更に関する協議を申し出ることができ、注文者は当該協議に誠実に応じるよう努めなければならないこととなります。

国が推進する月単位の週休2日

建設業については、働き方改革が本格化する前は、他産業に比べて、週休2日制が浸透していない面がありました。制度上は週休2日としていても、実態は工期を間に合わせるため、日曜日のみ工事を停止して、土曜日は休日出勤とするのが常態化していたわけです。

そこで国土交通省では、週休2日工事の普及が遅れている自治体に対して、働きかけを強化し、4週8休を達成した工事の割合を示す「週休2日達成率」について、各都道府県の実績調査を行い、公表しています。

都道府県の平均達成率は、2021年度は30.7%でしたが、2023年度は63.4%へ上昇しています。但し地域によっては、大きな差が生じており、県別に達成率の数値を公表することで見える化を行い、達成率下位の自治体に改善指導を推進しています。

上記表の通り、2023年度に週休2日達成率が最も高かった県は、秋田県で95.5%。最も低かった県は、岡山県で28.6%となっています。

一方、国土交通省発注の公共工事では、2024年度から全てを原則として週休2日とするようになりました。ただし、そうはいっても工期が厳しい現実があります。「週休2日」で全体が動くとなると、工期は全体で7分の2が非稼働ということになるからです。そこで、現在は「月単位の週休2日」を拡大する方向で推進されています。

「月単位の週休2日」とは、評価期間において28日(4週)を1期間として、全ての期間で4週8休以上の休日を確保した状態を指します。

具体的には技術者や技能労働者が対象期間内に平均して8日以上の休日を持つことが求められますが、現場を稼働させながらも、技術者や技能労働者が交代で連休を取得できる体制を整えることから推奨しているということです。

国土交通省では2024年度に地方整備局が発注する「本官工事」で月単位の週休2日を原則化しており、2025年度は出先事務所が発注する「分任官工事」でも月単位の週休2日を目指しています。

こうして月単位の週休2日が根付いたら、毎週土日を休みとする「完全週休2日」に移行していく予定で動いています。このように建設業の残業時間減少は、急加速の時期を脱して、着実に歩を進めて行こうとしている段階にあるといってよいでしょう。

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)