大工不足が深刻!国土交通省が「第1回住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会」を実施&積水ハウス建設の取組みを紹介【住宅業界NEWS】

大工の人数がピーク時の1/3に減少!このままでは家が建てられなくなる…

建設業界の人手不足についてたびたび報道されていますが、住宅分野の建設技能者不足は極めて深刻な状況となっています。下図は国土交通省が発表した国勢調査結果(総務省集計)です。

(国勢調査は5年に一度実施で、下図は最新集計です)

出典:大工就業者数の推移(国土交通省)

建設・土木作業従業者全体は、1995年から2020年までの25年間で37%減少したのに対して、大工は61%減少して半数を割り込んでいます。

また大工就業者数が93万7000人であった、ピーク時(1980年)に比べると、約1/3となる、29万8000人まで減少しており、高齢化が進んで、2020年には60歳以上の割合は43%に達した一方で、30歳未満の若手は7%にとどまるなど、今後、高年齢大工の引退が進めば、2035年にはさらに減少し、ピーク時のわずか1割程度になりかねない状況なのです。

国土交通省は「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会」を開始しました

国土交通省は、住宅分野の建設技能者が急速に減少している現状を受け、今後10年間で取り組むべき人材確保策を検討するために、有識者による懇談会を立ち上げ、2025年2月5日に「第1回住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会」として議論を開始しました。

懇談会は住宅建設に関わる建設技能者の確保・育成策をテーマとし、特に減少が顕著な大工を主なターゲットとして定期開催され、今夏までに方向性をまとめて、2025年度末に決定する住生活基本計画に反映していく予定です。

参照:国土交通省(~第1回「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会」の開催~)

第1回懇談会は、建設技能者を取り巻く現状や、国交省、文部科学省、厚生労働省による現行の施策を説明し、論点を整理する議事を行い、座長には芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授が就任しました。若手の入職促進の観点から、工業高校の教諭、担い手の定着の観点・キャリアアップの観点から、建築分野の職業訓練校の講師が委員として参加しました。

このほか住宅生産団体連合会やJBN・全国工務店協会をはじめ住宅関係の事業主団体、一人親方で構成する全国建設労働組合総連合からも委員を招きました。

会議は非公開による実施ですが、会議資料及び議事概要は、後日、国土交通省ウェブサイトに掲載予定となっています。

企業も社員大工の採用・育成を強化している(積水ハウス建設の事例紹介)

建設・住宅業界では、職方の高齢化や若年就業者の減少の加速に加え、「2024年問題」への対策として、社員として大工を採用して育成していくことが重要な課題となっています。

積水ハウスグループの積水ハウス建設ホールディングスは、2024年4月入社以降の高校卒業予定者を中心とした住宅建築を担う社員工「クラフター」の積極採用を実施し、今年度は前年の3.4倍にあたる134名が入社しました。そして、2025年4月入社も同程度の人数の入社を見込んでいるとのことです。

多くの人材を採用できた理由として、施工技能を習得できる訓練校の育成カリキュラム変更などによる体制の強化や、施工技能の可視化を含む新たな人事評価制度を導入するなど人財育成の取組みを一層強化し、積水ハウス建設のクラフターとして働く魅力を大幅に向上させたためだと思われます。それら新たな取り組みは次の通りです。

まとめ

大工さんと言えば、以前は「小学生が将来なりたい職業」として、必ず上位に位置し、職業イメージとしても、「カッコいい・高収入・尊敬できる」といった、憧れを感じさせるものでした。反面、棟梁のもとで何年も修業して、技術は盗んでおぼえるといった徒弟制度的な一面もありました。現代では、積水ハウス建設のように、職業訓練校などで合理的な実務研修をおこない、早い段階で技術習得していくことが不可欠と思われますし、建設現場では道具・工具の改良や電動化、安全衛生面の強化、DX化の推進などによる工程の見直しもあり、何年もかけて技能を磨いていくよりも、最新の環境で、最初から多能工としての活躍を目指せる方がよいに決まっています。

今後、大工が減少して困るのは、新築市場よりも、むしろ中古市場の既存住宅をどう維持していくのかが課題だとよく言われます。中古住宅のリフォームは、組み立てしかできない技術の経験が浅い職人では対処できず、省エネ性能の向上や耐震性能を高めるなど、しっかりした知識と経験がある職人を育成していく必要があります。

育成環境や体制を整えるためには、どうしても多くの資本を投下できる大手企業が有利となってしまいますが、中小事業者における育成も大きな課題です。

国土交通省が進める懇談会でも、業界団体や教育、職業訓練の現場と建設的な議論がなされ、有効な施策が生まれていくことが期待されます。

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)