特集【14】大成建設が、360度カメラ画像とAIを用いた「工事進捗確認システム」の本格運用を開始!【建設DX】

大成建設株式会社は、「生産プロセスのDX」の一環として、360度カメラと画像認識AIを用いて建設現場の施工状況や資機材の所在などを自動で図面化することができる「工事進捗確認システム」を機能拡張し、建設現場での本格的な運用を開始しました。

建設工事現場では目視確認が基本でした

これまで建設工事における施工管理業務では、工事の施工状況や進捗などを現場内の作業箇所まで移動して目視で確認するのが基本でした。

こうした確認作業は、その都度準備が必要で移動にも時間がかかることから、特に高層ビルなど大規模な建設現場では移動や確認に伴う工事担当者の負担が大きくなっていました。また、工事進捗に伴い変化する多種多様で大量の資機材の在庫管理や所在確認にも多大な労力と時間を要しており、施工管理業務の効率化を図るうえで課題となっていました。

常識を改めた360度カメラと画像認識AIによる分析力

そこで大成建設では、2022年に現場巡回時に360度カメラで撮影した動画を画像認識AIで分析し、現場の施工状況および各種資機材の保管場所を自動で図面表示することができる「工事進捗確認システム」を開発しました。

今回は、この「工事進捗確認システム」に、多くの建設現場での試行した結果から得られた課題や工事担当者の利用状況をもとに、Wi-Fi環境により各種センサーや情報機器と連動する独自開発のデジタル情報標準基盤との連携が可能となるよう機能を拡張し、導入効果を確認して、施工管理業務の効率化により、生産性向上を実現するシステムとして実用化するものです。

本格運用開始するシステムの特長と導入効果

本格運用開始した、本システムの特長および導入効果は以下のとおりです。

■特長

1.建設現場への導入・運用の手間を省き操作を簡易化

従来の工事進捗確認システムでは、現場撮影時に360度カメラと専用アプリをインストールしたスマートフォンを所持しながら操作する必要がありました。今回の改良により、スマートフォンなどの情報端末にインストールされた専用アプリが不要となり、360度カメラのみでの運用が可能になり、操作の簡易化が図れます。

2.簡単な操作で工事の進捗状況や資機材の所在等の図面化が可能

現場内の柱や壁など巡回時の歩行ルート上に、図面位置情報を登録した2次元コードマーカーをあらかじめ設置しておき、現場巡回時に検出したマーカーの登録情報と、360度カメラから取得したセンシングデータを基に現場内の位置情報を自動で取得する機能を備えています。

そのため撮影動画を本システムに送信するだけで工事の進捗状況や資機材の所在等を図面化することができます。壁・天井・床の内装工事など16種類の工種の進捗状況および24種類の資機材の所在をAIが判断して自動で図面化できます。

3.デジタル情報標準基盤「T-Basis X」と連携が可能

本システムの収集データは、大成建設のデジタル情報標準基盤「T-Basis X」上で閲覧できます。この連携により、重点的に状況確認したい場所や資機材の情報はT-Basis Xの定点カメラや無線タグでリアルタイムに把握し、それ以外の場所や資機材については本システムで現状を確認するといった使い方が可能です。

出所:大成建設

■導入効果

大成建設では、これまでに30箇所以上の建設現場で本システムの試行による運用を行い、生産性向上につながる様々な効果を実証してきたとのことです。

1.現場確認業務にかかる時間を削減

本システムの運用実績は、撮影日数が延べ600日、撮影フロア数が延べ1,800階を超えており、現場確認業務にかかる時間を1時間/(日・人)以上削減できることを確認しました。

2.工事関係者間での合意形成や書類作成等に活用が可能

本システム導入により、打合せ場所に関わらず資機材の所在など現場内を短時間で確認できることからスムーズな合意形成が可能となるほか、報告書等の書類作成への有効活用などの効果が期待できます。

本システムが、AIで認識できる工種、資機材など対象は、下図の通りとなります。

出所:大成建設

まとめ

建設工事現場では安全確認の標語として「目視徹底」が掲げられています。これは今後も継続していくのかもしれませんが、AIによる画像認識技術は急速に進んでおり、建設工事のDX推進や生産性向上には大きく寄与することになるでしょう。

特にPC上に構築できるシステムやカメラ機器などは、容易に導入が可能となるため、本システムは一気に普及展開が進み、運用で得られたデータを活かして、さらに高度化が進んでいくのではないかと予想されます。

本記事作成にあたり、大成建設のニュースリリースを参考としました。

大成建設リリース(2025.1.27)

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)