特集【13】奥村組が台湾のシールドマシンを1800㎞離れた大阪から遠隔操作に成功【建設DX】

奥村組と奥村機械製作は、台湾の新竹市で施工中のシールドトンネル工事で、シールドマシンに新開発した遠隔操作システムを導入し、約1800km離れた大阪市内の奥村機械製作所の本社オフィスから掘削、推進および排土の主要な運転を行えることを確認しました。今後も、通信の安定性や施工の安全性を検証し、国内外の工事への適用を目指していきます。

システム開発の背景は深刻な熟練オペレーター不足

シールドトンネルの掘進に用いるシールドマシンは、専門知識と操作方法を熟知した専門のオペレーターが現地で運転操作を行います。一方で、日本と台湾では、いずれも技能労働者の高齢化や入職者の減少などにより熟練オペレーター不足が深刻化しています。そこで、奥村組と奥村機械製作は、国内外を問わず、シールドマシンを遠隔地から運転できるシステムの開発に着手しました。 本システムを導入することで、熟練オペレーターは各現場に常駐する必要がなくなったり、複数現場の兼務が可能となったりすることが期待できます。

遠隔操作システムの概要

新開発のシステムは、遠隔地のPCからインターネット経由でシールドマシンの制御用コンピューターに接続し、遠隔運転するものです。従来のシステムでも工事ヤード内の少し離れた場所にある中央管理室と専用通信ケーブルで接続して操作することはできましたが、今回開発したシステムでは、インターネットに接続できる環境であれば、日本国外であっても、シールドマシンを操作することが可能となりました。

遠隔操作の検証結果でタイムラグは1秒以内

新システムを導入した現場は、台湾の新竹市で施工中であった台湾科学園区発注の宝山シールド工事。本工事は、泥土圧シールド工法で直径4.53m、延長2813mのトンネルを掘削する工事です。(本工事は、2024年12月10日に掘削完了)

大阪市内にある奥村機械製作本社オフィスに遠隔操作PCを設置し、インターネット経由で、現地に設置したシールドマシン制御用コンピューターに接続した結果、遠隔操作信号を送信してからのタイムラグが1秒以内で、シールド工法における主要な施工装備である掘削機構、推進機構、排土機構を問題なく操作できることを確認しました。

検証では通信の信頼性を確認するために、意図的にインターネット接続を遮断、復旧する試験を実施し、通信が復旧した後は、遅滞なくシステムが自動接続し、遠隔操作が再開できることを確認しました。

今後の展開

奥村組、奥村機械製作では、通信の安定性や施工の安全性について更なる検証を実施したうえで、台湾で施工予定の4件のシールド工事に本システムを適用していきます。これらの工事ではシールド機の総台数18台を操作し、総延長27㎞を掘削することになります。

また、国内シールド工事にも、順次、本システムを適用するほか、本システムを活用して熟練オペレーターが遠隔で技術指導を行えるような体制を整えることで、オペレーターの育成に取り組み、技術者不足の解消を図っていくことになります。

本記事構成にあたり、下記、奥村組のニュースリリースを参考としました。

台湾で稼働中のシールドマシンを約1,800km離れた大阪から遠隔運転に成功(奥村組ニュースリリース2025.2.5)

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)